About a girl

 俺は瑞希の住んでいたマンションまで行き、まずは管理人に事情を説明し、瑞希たちが残した情報を見つけようとした。
 ただ、これは空振りに終わる。
 瑞希たち一家は、どこに引っ越すのか言わずに去ってしまったらしい。
 となると、後は地道に聞き込むしかない。
 探偵の基本は聞き込みでもある。
 俺はマンションの管理人に説明し、マンションの中に入れてもらい、マンションの住民一人一人に、話を聞くことにしたんだ。どんな些細なことでもいい。何か情報がわかれば、それでいいんだ。
 瑞希が消えて三年。
 マンションの住民は覚えているだろうか?
 それはわからない。
 事情を知らないマンションの住民は、基本的に非協力的である。しかし、十軒ほど回った時、有益な情報を得ることができた。
「あぁ、野村さんね。懐かしいなぁ」
 その相手は、瑞希の住んでいた同じ階に住む初老の男性であった。どうやら、瑞希一家と面識があったみたいだ。
「野村さんがどこに行ったのか? 何か知りませんか?」
「う~ん、突然いなくなっちゃったからね。でもね、瑞希ちゃんの居場所はわからないけれど、ご両親の居場所はわかるよ」
「本当ですか?」
「うん、手紙のやり取りをしていたからね。ちょっと待っていなさい、少し確認するから」
「ありがとうございます」
 初老の男性は部屋の中に入っていき、俺は孤立する。
 この時間が、苦痛に感じる。
 ここがダメでも、今度は瑞希の両親を探せばいい。お父さんが働いていた職場を聞き込み、そこに話を聞けば、道は開くだろう。
 暫し待っていると、初老の男性が、俺の前に現れた。
「えっとね、個人情報にうるさいから、君を信頼して話すけど、野村さんのご両親は、今浦佐にいるんだよ」
「浦佐ですか?」
「そう。同じ新潟県だけど、かなり離れているね」
「ちなみに住所はわかりますか? ご迷惑を掛けないんで、教えていただけませんか?」
「君はどうして野村さんを探しているのかい?」
「野村瑞希。彼女は僕と交際していたんです。でも、突然いなくなってしまった。それで探しているんです」
「そうかね。なら教えてあげよう」
 俺は瑞希の両親がいる浦佐の住所を聞きだした。これで一歩前進である。今度は浦佐に行ってみよう。話はそれからだ……。