それが、超能力に関することだったんだよね。だからね、俺は酷く驚いた。超能力は、俺の中で、俺の過去を刺激するんだ。
　そう。［接続］の力。
　瑞希が言っていた、人を操る能力。
「上条さんは信じてるんですか？」
「う～ん、どうだろう？　あったら面白いよね」
　この上条という男は、少し変わっている。外見はかなり普通なんだが、考えがおかしいというか、変なんだよね。
　俺の過去が再燃する。
　つまり、［接続」の力が蘇ってきたのだ。久しく、俺は超能力を忘れていた気がするよ。だけど、心の奥底では、確かに息づいている。だからね、些細なきっかけで蘇ってきたんだよね。
「［接続］の力って信じます？」
　と、俺は上条さんに言ってみた。
　彼は、興味深そうに眼を見開き、俺に視線を注いだ。
「［接続］？」
「そうです。簡単に言うと、他人を操作する力です」
「他人を操作ねぇ。そんな力があったら、驚きだよね？　桐生君は信じてるの？」
「実はその……」
　俺は、そこで過去の思い出を彼に話したんだ。
　一体どうしてそんな話をしたのか、今でも理解できないよ。だけどね、何となく話してみたくなったんだ。
　基本的に、超能力など信じられてはいない。俺だって、信じたくはないんだ。だけど、不思議なことに、事故を起こした二人の人間たちは、確かに瑞希の声を聴いている。そして、その声を聴いてから、身体を操作されたんだ。　　
　同時に、その結果、事故が起きた。
　橘花恵、佐々岡優奈の二人は、その犠牲になったんだよね。
「なるほど、実に興味深い話だよ」
「到底信じられる話ではないですけどね」
「恨みの力か……。だが、危険だな」
「危険？　その前に、俺の話を信じるんですか？」
「もちろん、信じるとも。探偵を長くしているとね、不思議な力に会うこともある。だからね、俺は第六感的な力が、人間には潜んでいるのではないかと考えるんだよ。それで、君に話に興味が湧いた。実に面白いよ」
「俺自身は凄く辛いんですけどね。超能力みたいな力の所為で、瑞希は俺の前から消えてしまった。今もどこにいるのかわからないんです。探偵を始めて、身辺調査の基本は覚えましたが、全く情報がないところから、人を探すのは難しいです。もう、瑞希とは会えないのかもしれません」