About a girl

 大学生活は進み、時の流れが、俺の傷を少しずつ癒していったよ。だけどね、瑞希のことは忘れられなかった。心の片隅に、いつも彼女はいて、笑っていたんだ。一緒にデートして、楽しんでいた時の映像が、そのまま俺の脳内に投影されていたんだ。
 大学四年になり、俺は就職活動を始めて、無事ある企業に就職を決める。
 俺はある探偵事務所に入り、探偵として活動を開始した。
 やる気があったわけじゃない。探偵を選んだ理由は、調査する力さえあれば、瑞希が探せると思ったから。それにさ、生きていくためには、働かないとならないよね。いつまでも、学生ではいられない。俺も、モラトリアムを卒業する時がやって来たんだ。
 あぁ、瑞希……。
 君は今、何をしているの?
 そして、どこにいるの?
 さらに、俺のこと覚えてる? まだ好きかな? 会いたいよ。一目でいいからさ――。


第三章
「桐生君、君は超能力を信じるかね?」
 ここは、探偵事務所の中。
 俺は探偵として活動を始め、既に三年が経っていた。
 二十五歳になり、ようやく仕事を覚え始めたところである。
 基本的に、探偵活動は地味だ。
 身辺調査、浮気調査。この辺りが定番となっている。ある人の依頼を受けて、ある人を調査する。そして、その結果をクライアントに提出して、報酬を得る。場合によっては、尾行することだってある。
 何だか刑事になってみたいだよ。最初は、自分にできるか不安だったけれど、俺は先輩社員と協力し、何とか、仕事ができるようになったんだ。
 俺は、何というか特徴がない。
 だからね、探偵に向いていたのかもしれない。
 例えば、個性が強すぎると、変に目立ってしまい、探偵には向かない。きっと、普遍的な人間こそ、探偵に向いているのだと思う。
 探偵と言うと、推理小説で事件を解決するのが定番だけど、俺はそんな経験はしていない。そもそも、警察とのつながりはほとんどないのだ。だから、殺人現場に行って、安楽椅子探偵みたいに推理ショーは広げないよ。
 既に知っていると思うけれど、殺人事件は警察の領分だ……。探偵の仕事ではないんだよね。
 まぁ、そんな感じで、俺は仕事に慣れ始めていたんだけど、不意に上司である上条巧が、俺に不可思議なことを言ってきたんだ。