About a girl

「もう、無理なの。私は二人を殺してしまった。普通なら、死刑になってもおかしくないよね? だからね、健君とはいられない。ここで、さよならするのが一番いいの。それが健君のためでもあるし、私の役目。最後のね……」
「仮にその力が事実だとしよう。他にその力を知ってる人間はいるのか?」
「ううん、いないよ。私だけ」
「どうしてその力を知ったんだ?」
「何となく、自分には力があるなぁって思ったの。深い意味はないよ。人を好きになるのと一緒。突然好きになって、頭から離れなくなる。超能力も、突然目覚めて、自在に使えるようになるの」
「いつ力に目覚めたんだ?」
「多分、高校生の時、イジメられて、いつも塞ぎ込んでいたら、声が聞こえてきたの。私に力を与えるっていう」
「声?」
「そう、不思議な声。私にだけ聞こえるみたい。幻聴かもしれないけど、確かに聞こえたの。その声が、私に力を与えるって言ったのよ。私はそれに従った。そしたら、本当に恵ちゃんが死んだのよ」
「滅茶苦茶だ……、そんな話……」
「そうだよね。信じられるような話じゃないよね。でも、事実なの。健君ゴメンね。こんな女の子で……。こんな力がなかったら、ずっと健君と一緒だったのに。私は力を使ってしまったから、もう二度と、健君とはいられない」
 俺は言葉を失ったよ。もう、何を言っても瑞希は言うことを聞かないだろう。意外と頑固。頑ななのだ。一度決めたら、梃でも動かない。そんなところがあるんだよね。
 我慢強いから、イジメられた時も、決して学校を休まなかった。平然と登校して、イジメを跳ね返そうとしていた。本来、瑞希は強いんだ。情熱的なんだ。ただ、その力が、誤った方向に流れてしまった。
 超能力という、不可解な力を手に入れて……。
 過ぎたる力は、人を狂わせる。
 よく言うよね。
 例えば、拳銃を持ったら、実際に撃ってみたくなる。それと一緒だよ。超能力も覚えたら使ってみたくなる。
 だけどさ、瑞希を責められるのか?
 瑞希は、酷いイジメを受けていたんだよ。
 無視され、毛嫌いされ、邪魔者扱いされ。
 彼女が、一体何をしたんだろう?
 ちょっと、人と違っていて、浮いてしまうところがあるだけで、本当は、普通の女の子なんだ。それは事実だよ、俺が保障する。