About a girl

 そんな非日常的なこと、信じられるわけないよ。なのに、瑞希は極めて冷静に、俺に向かって言うんだよ。超能力が現実にあるってね。
 それはね、かなり不可解だったよ。変な膜に包まれて、そのまま飲み込まれていくような、得体のしれない感覚。止めてくれ、嘘だと言ってくれよ。 
 困惑する俺を前に、瑞希はさらに言葉を継いだ。
「優奈ちゃんを殺したのも、高校生の時、恵ちゃんを殺したのも私なの。これが私の正体。もう、健君とは一緒に居られないね」
「そんなこと言うなよ。俺は信じないぞ。そんな不可解な現実……」
 すると、瑞希は目に涙をいっぱい溜めて、俺に向かって言った。
「健君。もうお別れだよ。私、もう健君とはいらない。この力を知られた時、私は健君の元を去ろうと決めていたの」
「何で話したんだ。話さなければ、ずっとわからなかったのに」
「う~ん、どうしてだろう? 嘘をつくのに疲れたっていうか、自分の犯した罪の重さに耐えられなくなったんだよ」
「だけどさ、こんなの誰も信じないぞ……。罪を償うってどうやって」
「健君のもとを去り、それから考えるよ。もう、私は普通には生きていけないの。だからね、さよならしよ」
 瑞希は頑なだった。
 断固として、俺の意見を受け入れようとしない。
 これが最後なのか?
 これで瑞希と会うのは終わりなのか?
 それは嫌だった……。
 だけど、瑞希の得体のしれない能力を知り、俺は今まで通りに接することができるんだろうか?
 少なくとも、今まで通りにはいられない。そんな気がするよ。だけどさ、それは当然だよね。だってさ、彼女から超能力の話を聞いて、どうやらそれが本当らしい。そうなったら、普通には接せられないよね?
 こんな時、俺はどうしたらいいんだろう?? どう答えるのがベストなんだろうか? 誰でもいいよ、教えてくれ。この切羽詰まった状況を変える、奇跡的な一手を、教えて欲しい。
 もちろん、そんな神がかりな一手は、俺には思い浮かばない。何しろ、俺は普通の人間だ。超能力だってない。頭もよくない。三流大学に通う、底辺な学生。そんな俺に、この状況を打破しろと言っても無理がある。
 だけどさ、このままだと、俺たちは確実に離れ離れになる。もう、終わりなの? 瑞希??
「健君、ありがとう。今まで一緒に居てくれて。私、凄く嬉しかったよ」
「止めろよ。俺は嫌だよ」