俺はそっと瑞希のそばにより、彼女を抱きしめた。というよりも、俺にはそれくらいしかできなかった。瑞希は徹底的に痛めつけられた。何て不幸な子なんだろう? 可哀想だよね。単純に友達が作りたくて、大学で変わろうとしたのに、それが裏目に出てしまったんだ。
「瑞希。サークル辞めよう」
「うん」
「優奈のことは忘れろ。あいつは悪魔だ」
「うん」
「俺がずっと一緒に居るから安心しろ。高校時代だって、辛くてもやってこれたんだ。俺たち二人なら、きっと今回の壁だって乗り越えられるよ」
「健君のことは、信じてもいいんだよね? 優奈ちゃんが全部悪いんだよね」
「あぁ。そうだよ。あいつは瑞希の友達でも何でもない。悪魔だよ。酷いやつさ」
「せっかく友達ができたと思ったのに……」
「また最初からやり直そう。大学は広い。違った形で、別の友達ができるさ」
「そうかな。もう無理だよ」
「無理なもんか」
俺はそう言ったけれど、これから友達を作り直すのは、限りなく難しいと感じていた。なんというか、大学生活の肝は、最初の一カ月だと思うんだ。そこで、大抵の人間関係が形成されていく。遅れた人間は、その輪に入っていくのが難しい。
もちろん、それが全てというわけではないけれど、俺はそんな風に感じていたよ。
「瑞希、俺がいるだろ? だから心配すんな」
「そうだね。私には健君がいるもんね。うん、健君、ありがとう……」
瑞希は無理矢理ににっこりと笑った。
それがかなり痛々しくて、見ているのが辛かったよ。
「それにしても、優奈ちゃんは許せないなぁ。私たちの仲を滅茶苦茶にして。酷いよね」
「そうだな。でも仕方ない。あいつのことは忘れよう」
「死んじゃえばいいのにね」
ポロっと毒を吐いた瑞希。
瑞希の違った一面を見たような気がしたよ。俺たちは、付き合って、三年くらい経つけれど、まだまだお互いに知らないことが多すぎるみたいだ。俺は瑞希の心の中に棲む、黒い塊みたいなものを、感じたような気がしたんだ。そして、俺の嫌な予感は、最悪の形で的中する。
「桐生、知ってるか? 優奈が亡くなったって」
俺はサークルを辞めた。
それに合わせて友達はいなくなったんだ。でも、サークル時代の人間が、俺を見つけて駆け寄ってきたんだよね。それでね、衝撃的なことを口走ったんだ。
「優奈が亡くなった」
「瑞希。サークル辞めよう」
「うん」
「優奈のことは忘れろ。あいつは悪魔だ」
「うん」
「俺がずっと一緒に居るから安心しろ。高校時代だって、辛くてもやってこれたんだ。俺たち二人なら、きっと今回の壁だって乗り越えられるよ」
「健君のことは、信じてもいいんだよね? 優奈ちゃんが全部悪いんだよね」
「あぁ。そうだよ。あいつは瑞希の友達でも何でもない。悪魔だよ。酷いやつさ」
「せっかく友達ができたと思ったのに……」
「また最初からやり直そう。大学は広い。違った形で、別の友達ができるさ」
「そうかな。もう無理だよ」
「無理なもんか」
俺はそう言ったけれど、これから友達を作り直すのは、限りなく難しいと感じていた。なんというか、大学生活の肝は、最初の一カ月だと思うんだ。そこで、大抵の人間関係が形成されていく。遅れた人間は、その輪に入っていくのが難しい。
もちろん、それが全てというわけではないけれど、俺はそんな風に感じていたよ。
「瑞希、俺がいるだろ? だから心配すんな」
「そうだね。私には健君がいるもんね。うん、健君、ありがとう……」
瑞希は無理矢理ににっこりと笑った。
それがかなり痛々しくて、見ているのが辛かったよ。
「それにしても、優奈ちゃんは許せないなぁ。私たちの仲を滅茶苦茶にして。酷いよね」
「そうだな。でも仕方ない。あいつのことは忘れよう」
「死んじゃえばいいのにね」
ポロっと毒を吐いた瑞希。
瑞希の違った一面を見たような気がしたよ。俺たちは、付き合って、三年くらい経つけれど、まだまだお互いに知らないことが多すぎるみたいだ。俺は瑞希の心の中に棲む、黒い塊みたいなものを、感じたような気がしたんだ。そして、俺の嫌な予感は、最悪の形で的中する。
「桐生、知ってるか? 優奈が亡くなったって」
俺はサークルを辞めた。
それに合わせて友達はいなくなったんだ。でも、サークル時代の人間が、俺を見つけて駆け寄ってきたんだよね。それでね、衝撃的なことを口走ったんだ。
「優奈が亡くなった」