だって、サークルに行った時や、大学の講義が一緒だった時くらいしか話さないんだ。私生活では全く関与しない関係。本当に拙い関係性だよ。
 でも、それはいい。仮に友達を失ってしまっても、俺はいいんだ。それはまぁ、多少は傷つくかもしれないけれど、元から人付き合いが上手いわけではない。だからね、仮に友達がゼロになっても、問題はないよ。
 俺は瑞希さえいればそれでいい。彼女がいてくれれば、他になにもいらない。なのに、俺はその最愛の人を失ってしまうかもしれない。これは、大きな恐怖だったよ。
 もしもね、俺の前から瑞希がいなくなってしまったら、俺は死んでしまうかもしれない。それくらい、俺の中で瑞希は大きな存在だったんだよね。太陽みたいな存在だ。彼女がいなくなってしまったら……、俺は……。
 俺は、ずっと瑞希の家のまで、彼女を待っていた。時間が流れていく。何度携帯に連絡しても反応はない。それでも、俺は待つしかなかった。何しろ、俺は瑞希が行く場所に心当たりがない。これまで二人で色々な場所に行ったけれど、そこをすべて回るのは不可能だ。何しろ、横浜市は広い。この広大な土地の中で、たった一人の女の子を探し出すのは、最早不可能に近いよね。
 だからね、俺はひたすらに待った。
 信じる。
 祈る。
 それくらいしか、俺にはできない。いつか、瑞希はここに帰ってくるだろう。それを待つしかないのだ。
 俺の意志が通じたのは、一時間ほど経ってからだった。よろよろしながら、瑞希が家に戻ってきたのだ。
「瑞希……」
 瑞希は、家の前に俺がいると察し、ビクッと体を震わせた。
「健君」
「説明させてくれ。一連の出来事を」
「健君は、優奈ちゃんが好きなの?」
「まさか。いいか、これはお前にとって辛い話になるかもしれないんだけど、聞いてくれ。優奈って女はな、最初から俺たちの仲を滅茶苦茶にしようとして近づいたんだ」
 堰を切ったように、俺は一気に話した。
 瑞希は、一言一言を噛み締めるように話を聞き、時折ハッとしながら、耳を傾けていた。しばらくすると、瑞希は泣いたよ。わんわん泣いた。それはそうだろう。自分の信じていた友達に裏切られたのだから。