今、こいつを縛りあげて痛めつけたとしても、その報復を受けるだろう。もしかすると、死ぬかもしれない。俺たちは、基本的に弱者だ。友人関係を上手く作れず、社会から外れていく。
 あぁ、何でこんな風になってしまったんだろう。俺はそんなに高望みをしているわけじゃない。たださ、大学で普通に話す友達を望んだって、いいじゃないか? それなのに、そんな些細な幸せすら、優奈は拒絶する。すべてを痛めつけ、絶望に突き落とす。
 結局、この悪魔は俺たちのもとを去った。
 同時に、俺が優奈と会うのはこれが最後になるんだ。まぁ、その話は追々するから、今は瑞希を追いかけよう。俺にできるのは、瑞希を慰めることだけだよね。
 瑞希は深く傷ついている。俺に裏切られて、さらに自分が友人だと思っている人間に騙されたのだ。それは、きっと辛いだろう。何度も言うけれど、瑞希にとって、優奈は初めてできた友達みたいなものだった。
 もちろん、その関係は本当の友達ではなかったかもしれない。でもね、束の間の友達気分を味わったのは間違いない事実なんだ。それが、あっさりと崩れ落ちてしまった。何て不幸なんだろう。瑞希が可哀想すぎる。早く彼女に会って、一連の出来事を説明しないと。
 何かもが手遅れになってしまうかもしれない。
 俺は懸命に走って瑞希を追いかけた。
 だけどね、瑞希がどこに走ったのかわからなかった。携帯に何度も連絡を入れるけど、反応はない。もしかすると、家に戻ったのかもしれない。
 そう考えた俺は、瑞希の家に行ってみた。それでも、彼女は不在だったよ。何度トビラをノックしても、全く反応がなかったんだ。大いに困った。こんな時、男ってどうすればいいんだろうね? 答えがあるのなら、猛烈に知りたいよ。
 正直さ、俺も深く傷ついている。当然だけど、俺はあのサークルを辞めるよ。もう、あんな場所にはいたくない。それは事実だよね? そうなると、俺も多くのものを失ってしまうだろう。
 例えば友達。
 俺にも大学に入って少なからず友達ができたんだ。でもね、それはサークルに入っているからできたわけで、サークルを辞めたら、関係性は希薄になってしまう。多分だけど、俺はそのまま忘れられるだろう。元々、俺はそんなに大きな存在ではない。だからさ、俺が友達だと思っている連中は、きっと、俺をそこまで友達だと思っていない。