「健一が、酷いこと言うから、瑞希と友達になるの止めようかなって言ってんのよ。いいの、それでも」
 それは困る。
 優奈は、少し……、否、かなり困った所があるけれど、瑞希の友達なのだ。それも初めてできた友達と言えるだろう。だからこそ、瑞希は優奈をとても大切に感じているんだよね。そんなせっかくできた友達を、俺が奪ってしまってもいいのかな?
 待てよ。やっぱり、この優奈っていう女の子は少しおかしいよ。こいつはきっと、瑞希を友達とは思っていない。都合いい従僕くらいに考えているだろう。
 何しろ、瑞希は今まで友達がいなかったから、人付き合いが下手っていうか、距離を測れないんだよね。だからさ、友達がいうことは全て聞いてあげるっていう風になってるんだ。でもさ、それってやっぱり変だよね。
 この関係は、ここで終わった方いい。俺はそんな風に感じていたよ。だけどね、もしも優奈が友達になるのを止めた言ったら、瑞希はきっと悲しむよね。俺は、悲しむ瑞希を見たくなかった。
 たとえ、拙い関係であっても、折角できたサークルの友人なのだ。できるのなら、このまま穏便に関係を続けてもらいたい。
 だけど。
 けれど。
 ホントにこのままでいいんだろうか? このまま瑞希が優奈と付き合っていても、彼女が苦しむだけでいいことは何もない。多分、そうだよね。
「お前、ホントに瑞希を友達だと思ってるのか?」
「うん、思ってるよ……。だから、健一にも協力してもらいたいの」
「協力って……。何で俺を偽装彼氏にしたいんだよ。そんなら、他を当たってくれよ。サークルの人間なら、嬉々としてその役目を名乗り出る人間がいるだろうよ」
「そうかもしれないけれど。私は健一がいいの。私がこれだけお願いしてるんだよ。それなのに断るの?」
「そ、それは、その、やっぱり変だと思うし……。彼氏のフリなんてできないよ」
「大丈夫だよ。ただ、私の家に来て、一緒に食事するだけだから。それくらいなら、誰でもできるでしょ?」
「食事って。両親もいるんだろ?」
「うん。だって、両親に彼氏です、って紹介するためだもん。私の両親ね、恋人くらい作れってうるさいの。だから、一度恋人連れてきて、安心させようと思って。ねぇ、いいでしょ、協力してよ」
「瑞希が嫌っていうだろ? それに、優奈はまだ瑞希にこの話をしてないだろ?」