同時に、この時間が永遠に続けばいいと思っていたんだ。でもさ、楽しい時間は長く続かない。何かこう、辛いことがあるからこそ、楽しい時間が光り輝くのだと思う。俺たちの付き合いは、順調に見えていたのだけど、少しずつ亀裂が入り始めていたんだ。
 それでも、俺はまだまだこの幸せが続いて行くものだと思っていた。
「瑞希、キレイだな……。金沢区って幻想的だよ」
「うん。そうかもね。私の家も見えるからな」
「う~ん、どうだろう。見えるかもな」
「健君、今度は水族館に行こうね」
「そうだな、近いからいつだって行けるさ」
「楽しみだなぁ……。ねぇ、夕ご飯何食べる?」
「レストランがあるみたいだから、そこでもいいけどどうしたい?」
「家でまったりしたいかも……。お家で食べない?」
「それもいいな。じゃあ帰りにダイエー寄っていくか?」
「そうだね。そうしよう」
 俺たちは展望台から金沢区の風景を見て、そのまま電車に乗って金沢八景に戻った。八景のそばにはダイエーがあるから、そこで買いもをして、一緒に夕食を食べたってわけ。あぁ楽しかったよ。本当にね。心が躍るようだった。
 なのに、俺たちを切り裂こうとする悪鬼が現れたんだ。それは瑞希の友達でもある優奈。こいつが結構困った奴だったんだよね。
「健一、ちょっと話があるんだけど」
 大学が終わり、俺が帰ろうとしていると、唐突に優奈が現れて、俺に声をかけてきた。
「話?」
「そう。この間の続きよ」
「この間の続きって何だよ?」
「んもぅ、忘れたの? 彼氏のフリをしてほしいって話よ」
 あぁ、確かそんな話もあったな。
 うっかり忘れていたよ。
「あのさ、やっぱり嫌だよ。俺、彼氏のフリなんてできない」
「どうして? いいじゃん別に」
「よくないよ。瑞希だって悲しむし」
「あの子なら大丈夫よ。私のお願いなら、何でも聞いてくれるし」
「何でもって、お前、瑞希の友達だろ?」
「うん。そうだよ。それがどうしたの?」
「友達ってさ……。俺もよくわかんないけど、面倒な宿題押しつけたり、人の恋人を利用したりするような関係じゃないと思うんだけど」
 すると、優奈の表情がみるみると変わっていた。この女は、裏表がはげしいというか、ホントによくわからないよ。
「ふ~ん、そんな風に言うんだ。なら私、瑞希の友達止めよっかな」
「な、なんだって?」