「健一は何が好きなの?」
俺が好きなモノ……。
う~ん、一体何なんだろう? 俺って無趣味だし、あまり好きなことってないんだよな。何しろ、大学だって自分の身の丈にあった場所で、瑞希と一緒に居られることを条件に選んだしね。つまり、俺は自分で何か好きなのかわからない。
「わからないな」
「好きなこととないの?」
「うん。人並みにテレビとか見るし、ゲームもするけど、あまり熱中しないっていうか」
「じゃあ、本とか読むの?」
「そんなに読まないかな。昔さ、親が世界文学全集を買ってきたんだけど、一巻で挫折したくらいだから」
「確かに、ドストエフスキーとか有名だけど、難しいよね。私もよくわかんないし」
優奈の口から、世界的な文豪の名前が囁かれて、俺は少なからず驚いたよ。流行を追いかけているだけの女の子ではないようだ。
「ドストエフスキーなんて知ってるんだ」
「うん、まぁね。健一は?」
「名前だけ。作品は読んだことない」
「難しいよ。第一、十九世紀のロシアの作品を、今の人間が理解するのって難しいと思うし」
「まぁそうだろね」
「でしょ、それに、今はもっと楽しいことあるしね」
娯楽で溢れている。それは間違いないだろう。金沢八景は結構田舎だけど、横浜まで出れば何でもある。大都会が、ホントにすぐそばにあるのだ。
新潟市は、一応政令指定都市でもある。
だからそれなりの地方都市なんだけど、やはり限界があるよね。横浜とは全然違うよ。第一、駅の規模が全く違う。新潟駅は、新幹線が停まるけれど、横浜みたいに巨大じゃない。
やがて、注文したコーヒーや紅茶が運ばれてくる。少し口を付けると、やけに酸味の強いコーヒーだったよ。
「ねぇ、健一。お願いがあるんだけど」
「お願い? 何それ?」
「一日だけ私の彼氏になってくれない」
「はぁ? おま、何を言ってるんだよ。そんなこと」
「お願い、友達を助けると思って……、ねぇいいでしょ? 一日だけだから」
困った。大いに困ったよ。
俺はどう答えるべきなんだろう。激しく動揺して、心臓の鼓動が高鳴るのを感じたよ。
「でも、俺には瑞希がいるし」
「瑞希には私から説明するから」
「瑞希が嫌って言ったらやらないぞ」
「大丈夫だよ。あの子ならわかってくれるよ」
俺が好きなモノ……。
う~ん、一体何なんだろう? 俺って無趣味だし、あまり好きなことってないんだよな。何しろ、大学だって自分の身の丈にあった場所で、瑞希と一緒に居られることを条件に選んだしね。つまり、俺は自分で何か好きなのかわからない。
「わからないな」
「好きなこととないの?」
「うん。人並みにテレビとか見るし、ゲームもするけど、あまり熱中しないっていうか」
「じゃあ、本とか読むの?」
「そんなに読まないかな。昔さ、親が世界文学全集を買ってきたんだけど、一巻で挫折したくらいだから」
「確かに、ドストエフスキーとか有名だけど、難しいよね。私もよくわかんないし」
優奈の口から、世界的な文豪の名前が囁かれて、俺は少なからず驚いたよ。流行を追いかけているだけの女の子ではないようだ。
「ドストエフスキーなんて知ってるんだ」
「うん、まぁね。健一は?」
「名前だけ。作品は読んだことない」
「難しいよ。第一、十九世紀のロシアの作品を、今の人間が理解するのって難しいと思うし」
「まぁそうだろね」
「でしょ、それに、今はもっと楽しいことあるしね」
娯楽で溢れている。それは間違いないだろう。金沢八景は結構田舎だけど、横浜まで出れば何でもある。大都会が、ホントにすぐそばにあるのだ。
新潟市は、一応政令指定都市でもある。
だからそれなりの地方都市なんだけど、やはり限界があるよね。横浜とは全然違うよ。第一、駅の規模が全く違う。新潟駅は、新幹線が停まるけれど、横浜みたいに巨大じゃない。
やがて、注文したコーヒーや紅茶が運ばれてくる。少し口を付けると、やけに酸味の強いコーヒーだったよ。
「ねぇ、健一。お願いがあるんだけど」
「お願い? 何それ?」
「一日だけ私の彼氏になってくれない」
「はぁ? おま、何を言ってるんだよ。そんなこと」
「お願い、友達を助けると思って……、ねぇいいでしょ? 一日だけだから」
困った。大いに困ったよ。
俺はどう答えるべきなんだろう。激しく動揺して、心臓の鼓動が高鳴るのを感じたよ。
「でも、俺には瑞希がいるし」
「瑞希には私から説明するから」
「瑞希が嫌って言ったらやらないぞ」
「大丈夫だよ。あの子ならわかってくれるよ」