味は申し分なく、俺はお腹いっぱいに食べたんだよね。やはり、美味しいものをたくさん食べると、気分がよくなるよ。
　食事が終わると、瑞希が手製のプリンを作っていて、二人でそれを食べた。食べ終わることには、しっとりとした空気が流れていたよ。
「健君、今日はまだ一緒に居てくれるよね？」
「いいけど……。でも……」
「一緒に居てくれなきゃ嫌だよ」
　それは少し棘のある言葉だった。
　穏やかな心の中に、激烈な思いが潜んでいるような、そんな感覚。瑞希が洗い物を終えると、俺は彼女の部屋に向かったんだ。
　瑞希の部屋に入るのは、高校に上がってからは初だ。中学の時、一緒に勉強したことがあって、その時彼女の部屋に入ったんだけど、それ以来だったよ。
　瑞希の部屋は、結構ファンシーで、キャラ物のクッションがあったり、ぬいぐるみがあったりと、ファンタジーさに満ちていた。なんというか、可愛い女の子の部屋に来たような気がしたよ。
　もちろん、勉強机や本棚なんかもある。あと、ベッドもね。ベッドは普通のシングルサイズで、チェック柄の布団カバーがかかっていた。俺の部屋とは大違いだし。前来たよりも、幾分か雰囲気が変わっていたから、俺は驚いたよ。
「健君。私、シャワー浴びてくる。いいよね？」
「あぁ」
　としか、俺は言えなかったよ。
　ここで、彼女の気持ちを踏みにじるのは、俺にはできなかったんだ。間違いない。彼女は俺を求めている。それも性的に……。
　瑞希がシャワーに消えてから、俺は一人、悶々としていた。今日、俺は瑞希を抱く。つまり、大人の男になるのだ。それはまぁ、嬉しいという気持ちもあるんだけど、何となく緊張してしまう。今の時代、高校生で初体験を迎えるのは、そんなに早い方じゃないし。
周りのクラスメイトの中には、とっくに性体験を済ませた人間だっているだろう。
　俺には関係のない話だって思っていたよ。まだまだ、俺は童貞を貫いていくつもりだったんだ。でもね、瑞希と付き合って、俺は変わり始めたんだよ。彼女と付き合って、俺たちは虐げられるようになった。それは仕方ないんだけど。どんどん親密になっていて、俺たちは二人で一つになりつつあったんだ。
　やがて、シャワーを浴び終わった瑞希が戻ってくる。クマの耳のフードがついた、可愛らしいラウンジウェアを着ている。瑞希は俺を見ると、恥ずかしそうに笑みを浮かべた。