もちろん、俺への無視も続いている。俺も、貞子化した瑞希と付き合っているとバレているから、同時に不審がられた。なんであんな女と付き合っているのか? 気味悪がられたってわけ。まぁ、いいんだけどね。俺は瑞希が好きだから、他に邪魔が入らなければそれでいいと思っていんだ。
 そうなると、俺たちの関係は、本当に二人だけの世界だった。世界で二人きり。味方は二人だけ。寄り添って生きているような気がしたよ。
 俺は瑞希を必要としたし、瑞希は俺を必要としたんだよね。
 アイニージュ―。そんな関係が出来上がっていたんだ。確かに、周りの反応は冷たい。グサッと来るものがあるよね。でも、それはそれでいい。俺は瑞希がいればそれでよかったんだよ。他がどう思おうが、それは関係ない。いつも二人でいられれば、万々歳だ。
 だけどね、瑞希は確実に変わり始めた。何というか、狂っていくというか、そんな感じだ。瑞希は確かに俺を必要としている。だけど、その思いが、猛烈に強くなり始めたんだよね。俺なしではいられないというか、とにかく俺にべったりとなった。
「健君。キスして」
 これくらいなら、まだ可愛い方だ。俺もキスするのは嬉しかったから、最初の頃は嬉々として反応していたよ。色んな所へ行って、そこでキスをしまくった。人目があるにも拘らず、俺たちは自分たちの世界にいたんだよね。
 でもね、それがどんどんおかしな方向になったんだ。
「健君。誰を見てるの?」
 学校帰り、俺たちはいつも通りデートしていた。学校帰りは夕方だから、大抵カフェへ行くか、駅前のゲームセンターなんかでブラブラしていたんだけど、瑞希は俺の視線を激しく気にし始めたのだ。
 俺の視線。
 それが自分に注がれていないと、激しく不満を言うようになった。俺だって瑞希が好きだ。だけど、四六時中彼女を見ているわけではない。歩いていれば、ふと同じような学生が目に入るし、学校の人間だとわかれば、少し意識してしまう。誰かを見つめてしまうことだってあるだろう。それって、人として当然の反応だよね。
 それなのに、瑞希は俺の視線を独り占めしようとしたんだ。早い話、俺が他の女の子を少し見ただけで、怒るようになったわけ。