刑事の名は二階堂進さん。四十歳くらいの壮年の男性。刑事っていう仕事は、よっぽど激務なのか、顔中に皺が入っていて、どこか疲れているよう見えたよ。
「すまないね。君もショックを受けているはずなのに……」
取調室は、小ぢんまりとしていた。多分六畳くらいの空間だろう。俺の部屋と同じくらいだよ。
「いえ」
「実はね、橘花恵は事故に遭う前、ある人物に会っていた」
「俺ですね」
「そう。少し話を聞かせてくれないかな」
「話って言っても。彼女は事故で亡くなったなんじゃないですか?」
「もちろん事故だ。その可能性が大きいだろう。だがね、不審な点も多いんだ」
「不審な点ですか?」
「そう。橘花が事故に遭った時、交差点を侵入してくるトラックが見えたはずなんだよ」
「はぁ、どういうことです?」
「トラックが突っ込んでくるのに、気づかないわけはない。彼女は自らトラックに突っ込んだ。つまり、自殺だよ」
「自殺って……、そんな馬鹿な」
「馬鹿な話だよ。私も驚いているくらいだ。だけどね、この事件は色々おかしな点が多い。普通の事故ではないような気がするんだよ」
「普通ではない?」
「君もニュースを見ていれば知っているだろう? 運転手である坂本という男の証言を……」
証言。
それはつまり、身体を乗っ取られたというアレか……。
馬鹿! そんなこと、ホイホイと信じられるわけがない。これは事故なんだ。ただの事故だ。もちろん、不幸な事故だというのはわかるよ。何しろ、年若い女の子の尊い命が喪われたんだからね。
だけど、それを自殺って考える警察だっておかしいよ……。もしも彼女が自殺だったら、その原因を作ったのは俺になってしまう。
橘花は、俺に愛の告白をした。それはわかるよね? でもさ、俺はその告白を拒絶したんだ。応えられるわけがない。何しろ、橘花恵は俺と瑞希を虐げていた。イジメの張本人なんだ。そんな悪い奴と、俺は付き合いたくないよ。
「知ってます。運転手は身体を乗っ取られたって言ってるんですよね」
「うむ、そうだ。今、精神科医が精神疾患の可能性を調べている。坂本という男が働いていた会社は、かなりのブラック企業で、休む暇がなかったようだからね。だからね、精神を病んでいたとしてもおかしくないんだ」
「精神疾患だとわかるとどうなるんですか?」
「すまないね。君もショックを受けているはずなのに……」
取調室は、小ぢんまりとしていた。多分六畳くらいの空間だろう。俺の部屋と同じくらいだよ。
「いえ」
「実はね、橘花恵は事故に遭う前、ある人物に会っていた」
「俺ですね」
「そう。少し話を聞かせてくれないかな」
「話って言っても。彼女は事故で亡くなったなんじゃないですか?」
「もちろん事故だ。その可能性が大きいだろう。だがね、不審な点も多いんだ」
「不審な点ですか?」
「そう。橘花が事故に遭った時、交差点を侵入してくるトラックが見えたはずなんだよ」
「はぁ、どういうことです?」
「トラックが突っ込んでくるのに、気づかないわけはない。彼女は自らトラックに突っ込んだ。つまり、自殺だよ」
「自殺って……、そんな馬鹿な」
「馬鹿な話だよ。私も驚いているくらいだ。だけどね、この事件は色々おかしな点が多い。普通の事故ではないような気がするんだよ」
「普通ではない?」
「君もニュースを見ていれば知っているだろう? 運転手である坂本という男の証言を……」
証言。
それはつまり、身体を乗っ取られたというアレか……。
馬鹿! そんなこと、ホイホイと信じられるわけがない。これは事故なんだ。ただの事故だ。もちろん、不幸な事故だというのはわかるよ。何しろ、年若い女の子の尊い命が喪われたんだからね。
だけど、それを自殺って考える警察だっておかしいよ……。もしも彼女が自殺だったら、その原因を作ったのは俺になってしまう。
橘花は、俺に愛の告白をした。それはわかるよね? でもさ、俺はその告白を拒絶したんだ。応えられるわけがない。何しろ、橘花恵は俺と瑞希を虐げていた。イジメの張本人なんだ。そんな悪い奴と、俺は付き合いたくないよ。
「知ってます。運転手は身体を乗っ取られたって言ってるんですよね」
「うむ、そうだ。今、精神科医が精神疾患の可能性を調べている。坂本という男が働いていた会社は、かなりのブラック企業で、休む暇がなかったようだからね。だからね、精神を病んでいたとしてもおかしくないんだ」
「精神疾患だとわかるとどうなるんですか?」