自殺だったら、多分その原因を作ったのは俺になるよね? だって、俺は彼女の想いを挫いた。それも痛烈にね。だからさ、橘花がショックを受けたのはわかる。好きな人にフラれるのって結構辛いと思うしね。
 俺だって、瑞希が好きだけど、そんな瑞希に拒絶されれば辛くなる。もしかすると、死にたくなるかもしれない。
 否、待て待て、告白に失敗しただけで、自殺なんてするだろうか? 橘花は少し狂っているかもしれないけれど、死ぬような人間じゃない。そんな風な気がするよ。
「健君、何を考えてるの?」
「否、橘花って事故死なんだよな」
「先生の話だとそんな感じだったよね」
「自殺ってことはないよな」
「自殺? 恵ちゃんが自殺する理由あるの?」
「理由になるかわからない……。でもその理由を作ったのは俺かもしれない」
「健君、考え過ぎだよ。恵ちゃんは事故で亡くなった。それだけの話だよ。だから、自分をそんな風に責めちゃダメだよ」
「わかってるけど……。ゴメン、俺、今日は早退するよ」
「具合悪いの? だったら私も帰る」
「頼む、今日は一人にしてくれないか。多分、明日になれば大丈夫になると思う。ただ、少し考える時間が欲しいんだ」
「健君……。わかった。その代わり、明日は一緒に私とご飯食べること。いいね?」
「わかったよ。約束する」
 俺は担任に具合が悪いと嘘をついて、そのまま早退したんだ。その際、俺は橘花が事故に遭った場所を聞いておいた。それは、新潟の東大通っていう新潟駅の前に広がる大きな通りで起きた事故らしかった。
 大きな通りだけあって、トラックの出入りだってあるだろう? しかし、本当に事故何だろうか? とにかく現場を見れば何かわかるような気がした。
 俺が学校を出て、万代シティを通り、新潟駅の方に向かう。途中に東大通はあり、そこは昨日の事故が原因なのか、警察官の姿がチラホラあった。事故現場は直ぐにわかった。ひしゃげたガードレールには血飛沫が付いている。生々しい傷跡だ。もちろん、既に遺体はない。だが、献花されているのがわかった。そして、俺は黙ってその場に立ち尽くした。
 俺が暫し立ち尽くしていると、いつの間にか後ろに老人が立っていた。白髪の腰の曲がった老人だ。多分八十は過ぎているだろう。
「君は事故に遭った子の知り合いかね?」
 と、老人は告げる。
「はい。そうです。昨日も話たんですよ」