俺たちは、ペンギン海岸に行き、ペンギンを見た。周りには全く客がいなかった。ペンギンも巣の中に入っているのが多いようで、外に出てきているペンギンは少ししかいなかった。
「ペンギン、可愛いね」
「うん。ペタペタ歩いてるな」
「それが可愛いんだよ」
 俺たちは、じっくりとペンギンを見る。
 もうすぐ、閉館時間である五時を迎えてしまう。
「健君。ゴメンね」
「え? 何が??」
「健君までイジメられるようなっちゃったね。だから、申し訳なくて……」
「そんなこと言うなよ。俺は平気だぜ! だったさ、もともと俺って友達と多くないしさ。今更無視されたり、変な噂を流されたりしたからといっても、痛くも痒くもないよ」
 これは嘘だった。
 この時、俺も無視されるようになっていた。それって結構辛いんだよね。例え友達が少なかったとしても、無視されるのはしんどいよ。だけど、それを瑞希には言えない。彼女だって辛いんだからね。
「健君、私のこと嫌いになった?」
「なんでだよ。嫌いじゃないよ」
「ホント?」
「ホントだよ。むしろ俺だってお前に謝りたいんだ」
「なんで?」
「お前を守れないから」
「健君は守ってくれてるよ。こうして、水族館にも一緒に来てくれたし。それだけで嬉しいの」
「ならいいけどさ」
「私が悪いのかもしれないの」
「悪いって何が?」
「私がイジメられるようになった原因。なんとなくわかるんだ」
「やっぱり橘花の所為か?」
「うん。多分……」
「酷い奴だよな。人をイジメて楽しんでるんだ。いい死に方しないよ。きっとね」
「今日も言ったけど、恵ちゃんは健君が好きなんだと思う」
「なんでだよ。俺ってそんなにモテないぜ」
「あのね、私、恵ちゃんに健君の連絡先を聞かれたの」
「そうか。それで、教えたのか?」
「ううん。教えなかった。だって、普通さ、女の子が男の子の連絡先聞くのって、何かあると思うじゃん」
「……まぁ、そうかな」
「そうだよ。それにね、私は何となく、恵ちゃんが健君に好意を持っているって察したの。だからね、取られちゃうって思っちゃたんだ。それで、連絡先教えなかった。そうしたら、いつの間にか無視されるようになって。今に至るって感じかな」