例えば『淫乱』『ビッチ』『ヤリマン』『変態』こう言った噂が流れるようになったんだよ。それにプラスして、被害は俺にまで及んだ。どうやら、俺たちが放課後ヤリまくっているという噂が流れているようなのである。
 こうなると、クラスメイト達の目は一気に変わる。俺たちは見世物のような存在になり、奇異の目で見られるようになったんだ。
 俺は、瑞希が大切だ。だから、セックスは愚か、キスだってしていない。そういうのは、まだ早いかなって思ってるからだ。もちろん、性に興味がある年頃だから、当然セックスだってしてみたい。でもそれは瑞希を傷つけてしまうような気がして、俺は全く手を出さなかった。
 なのに、俺たちがヤリまくっているという噂が流れて、俺はね、正直辟易したよ。なんでそうなるんだろう? どうして、こんな噂を流すんだろう? 全く理解できないよね。本当に辛いよ。
 それでも、俺は瑞希との付き合いに満足していた。学校の中は、これまで以上に地獄になっている。だけどね、放課後になれば、俺は瑞希と一緒に居られる。その時間が、本当にかけがえなくて、俺の支えになっていたんだよ。
 多分、瑞希も必死に耐えていたと思う。イジメっているのは、かなり精神的に疲れてしまう。瑞希は強がっていたが、徐々に弱っていくのが目に見えていた。
 あまりに心無い噂が流れたから、俺たちは先生にも呼ばれてしまう。そして、事実確認をされ、全く悪くないのに説教されるようになってしまった。
 最早、学校の中に味方はいない。
 否、味方はいる。信じられる、たった一人の存在。
 それは俺にとっては瑞希だ。
 そして、瑞希にとっては俺だ。
 俺たちは二人で一つだった。どんなに辛くても、二人だからやっていける。そんな風に思えたよ。二人でいる時間が、濃密になっていき、俺たちはどんどん研ぎ澄まされていった。
 いつものように学校を終え、俺は瑞希と一緒に歩く。学校は地獄だけど、放課後は天国だ。この代わり身が憎いくらいだよね。
「健君。マリンピア日本海行きたい」
「ちょっと遠いな」
 マリンピア日本海というのは、新潟市中央区にある水族館だ。結構規模が大きくて、新潟市内に住んでいる人間なら、必ず一度は行ったことがあるだろう。イルカショーとかもあるんだぜ。