「よくないよ。だけど、俺は瑞希と離れたくない」
「やっぱり付き合ってるんだ」
「うん。そうだよ」
「別れなよ。あんな女。絶対止めた方がいいよ。わざと媚び売って、可愛子ぶってるだけなんだからね」
「そんなことないよ」
「毒されてるのね。私ならそれを救ってあげられるのに。とにかく、瑞希と別れて……。瑞希がもっとイジメられるかもしれないんだよ」
「お前が指示してるのか? 瑞希をイジメろって」
「違うよ。だけど、あの子をイジメている人間の正体は知ってる。そして、私なら、その子を止められるんだけどなぁ」
 これ以上、瑞希へのイジメが酷くなったら、俺は耐えられない。瑞希だって、今以上にダメージを受けてしまうだろう。もしかすると、辛すぎて自殺してしまうかもしれない。
 もしも、そんなことになったら、俺はきっと生きる希望を失ってしまう。やはりここは言うことを聞くしかないのだろうか?
 これは、悪魔の契約だ。
 命を売り渡すような行為だ。何となくだけど、俺の愛の力を試されているような気がするよ。
 んんん。愛……。俺って瑞希が好きだよね。でも、その好きっていう気持ちは、一体どのくらいのレベルなんだろう? 少し揺さぶられて、後悔してしまうくらいのレベルなのか? 
 否、違うよね。俺は心の底から瑞希が好きなんだ。その気持ちに気づいたばかりなんだよね。大きな困難が待っていたとしても、俺は負けたくない。
 多分、俺が瑞希を拒絶すれば、彼女は悲しんでしまう。もしかすると、イジメられている時以上の衝撃を与えてしまうかもしれないよね。それではダメなんだ。俺は瑞希を守りたい。守るって誓ったんだ。例え、学校のイジメを止められなくても、放課後一緒に遊んで、彼女を慰めることはできる。
 そこまで考えると、俺の中で沸々と力が湧いてくる。愛って何なんだろう? 恋とは違うのかな? 俺は瑞希に恋している。でも同時に好き以上に、愛していると言っても過言ではないんだよね。
 愛している人と、離れ離れなになるのは、とっても辛いよね。俺だって辛いよ。だからさ、キッと瑞希だって辛いはずなんだ。
 ならさ、俺はここで踏ん張らないと。楽な方向に逃げちゃダメだよね。
 その時だった。俺は後ろに人の気配を感じた。ハッとして後ろを翻ると、そこには泣きそうな顔をしている瑞希の姿があったんだ。
「瑞希……。お前、いつから?」