俺がそう問い詰めると、瑞希はスッと顔を赤くさせた。カラオケルームの中は、防音がしっかりしているためか、沈黙の音さえ聞こえるようであった。ちーんと、静かな空気が包み込み、緊張感が高まる。
 そんな中、瑞希は意を決したように告げる。
「健君。私、これからビックリするようなこと言うよ」
「びっくりすること? カラオケ奢れとかか?」
「あはは、そうじゃないよ。私ね、あのね……、えっと、その……」
 急に瑞希はもじもじとし始めた。
 その姿を見て、俺は何となくだけど、彼女の言いたいことを察したんだよね。ラノベの主人公なんかになると、ヒロインの想いにいつまでも気づかないケースが多いけれど、俺は意外と敏感なんだ。瑞希はきっと俺が……。
 これは、俺の自惚れか? それとも事実か? カラオケルームの沈黙で、俺は人生の意味を察したような気がするよ。
「瑞希……、お前、もしかして俺が」
 瑞希の顔は茹蛸みたいに赤くなっている。沸騰寸前という感じだ。
「健君、私ね、健君が好きなの。言っちゃったよ」
「そうか……」
「ゴメンね。びっくりしたよね。それに健君は私のこと好きでも何でもないしね。あはは、忘れて、今のなし!」
 瑞希の瞳は、潤々していて、涙を溜めていた。女の子の妖艶な姿を見たような気がしたよ。そしてね、その瞬間、ビビビって俺に電流が走ったんだ。気が付いたら、俺は動いていた。っていうよりも、彼女を抱きしめていた。
「んぐぅ……、け、健君、え? えぇぇぇー」
「俺、瑞希が大切だよ。今までずっと気づかないふりをしてた。あまりに近かったから、その存在の強さに気づかなかったんだ」
「健君、私のこと好き?」
「好きだよ。だからお前が不憫に堪らないんだ」
「健君がいれば、私は強くなれるよ。だからずっと一緒にいてくれる?」
「もちろん。一緒に居るよ。それでお前の心が少しでも和らぐのなら」
「ありがと、健君は優しいね」
「優しくないよ。今まで酷い態度を取ってたし」
「その分、私を大切にしてね」
「うん」
「じゃあ約束。学校が終わったら、毎日私とデートして。どこでもいいから、私を連れて行って。そうすれば、私イジメられても大丈夫だから」
「わかった。放課後は一緒に居よう。約束するよ」