平日の夕方だったけれど、かなり混んでいるようで、俺たちは少し待った。二人共、会員ではなかったから。会員証を作って会員価格でカラオケを楽しむ。ジュースなんかは飲み放題のようであった。
 個室に案内されると、瑞希はソファに座り、ガクッと項垂れた。本当に消耗しているように見えるよ。
「瑞希、大丈夫か?」
 心配になった俺は、そう声をかける。
「うん。大丈夫。ねぇ健君、学校が終わったら、いつも遊んでくれる?」
「え?」
「学校では私に話しかけないでいいよ、その代わり、学校が終わったら相手して欲しいの」
「学校で話すなって、お前、それでいいのか?」
「だって、私に話しかけると、健君も無視されるかもしれないよ」
「俺は大丈夫だよ」
「私、嫌だよ。健君が無視されるの見るの」
 俺はそこまで聞いていたたまれなくなったよ。瑞希が一番辛いんだ。だって、イジメを受けて無視されているのは彼女だから。だけど、こいつは自分の心配じゃなくて、俺の心配をしてるんだよ。俺が無視されないように、自分に話しかけるなと言ってる。
 それって凄いことだよね。俺にはできそうにない。
「学校が終わったら付き合ってやるよ」
「ホント?」
「ホントだ。でも、大丈夫か? 辛くないのか?」
「辛いよ。でも、放課後になって健君と一緒に居られるって思えれば大丈夫だよ。元気になれるもん」
「どうして? 俺なんて何もできないのに。俺はお前の幼馴染だ。だけど、そんな幼馴染が困っているのに、助けられない。それが堪らなく悔しい」
「私、ちょっと嬉しいよ」
「嬉しい? なんでだよ??」
「だって、私がイジメられるようになって、健君が真剣になって私の相手をしてくれるから。今までは嫌そうだったし……。あ、今でも嫌なのかな?」
「嫌じゃないけどさ。俺、お前を助けたい」
「私を助けてくれるの?」
「助けたい……。でもさ、どうやって助けていいのかわからないんだ。ホントダメだよな、俺、ゴメンな」
「そんなことないよ。健君はこうして私の相手をしてくれる。それだけで私は嬉しいよ」
「俺でいいのか?」
「今、私の味方になってくれるのは、健君しかいないから。でもね、どんなに辛くても、健君が味方でいてくれるなら、耐えていけるんだよ」
「どうして? どうしてだよ」