About a girl

 居ても立っても居られない。俺は直ぐにマリンピア日本海を出て、バスに乗った。瑞希がどこに行ったのかわからない。
 勘だけど、駅前に行ったのではないか?
 俺がバスに乗り、涙を浮かべていると、不意に、ガツンと頭を叩かれたような気がした。その瞬間、俺は瑞希を忘れてしまった。つまり、瑞希は消えたのだ。この世界から。
 永遠に……。
 駅前に着いた俺は、訳がわからなかった。なぜバスの乗っているのか? そして、何故泣いているのか? だけど、何か重要なことが隠されているような気がして、身体が震えている。
(あれ、なんだろう? 何か忘れてるような気がする。それも、かなり大切なことを……)
 駅までウロウロしていると、目の前に俺の上司である上条さんが現れた。なぜ、こんなところにいるのだろう?
「上条さん、何でここに?」
「君の愛の力を確かめに来た」
「愛の力?」
「一度だけ、奇跡を見せよう。愛の力があれば、それは可能なんだ」
 彼は僕に触れて、何やら呪文を唱え始めた。
 すると、俺の脳内に一気に情報が流れてくるのだ。そして、その中に瑞希の記憶もあった。
「瑞希!」
 俺は叫んだ。
 瑞希は俺の前から消えた。そして、永遠に存在が消失してしまったのだ。だから、俺の記憶からもなくなってしまったんだよ。
 でも、俺は上条さんの力で思い出した。そんな俺の様子を上条さんは見つめている。
「瑞希さんは、君を愛していたと思うか?」
 よく考える。
 俺は、瑞希がなぜ消えたのか、その理由を必死になって考えていた。そして、結局辿り着いたのは、やはり『愛』ということだったんだ。
「瑞希は俺を愛していた。だから消えたんです」
「ほう。どういうことかね?」