こうしている間にも、別れの時間は迫っている。明日には瑞希は消えているのだ。もう二度と会えない場所に旅立ってしまう。
どうしてなんだろう?
超能力を恨むよ。上条さんが、[接続]の力を与えなければ、こんなことにはならなかったんだ。あの人は悪魔だ。文字通り。瑞希の命を吸い取り、それで生きている。全く酷い話。生きたい人間がここにいるのに、あの人は容赦なく命を奪っていくんだ。
やがて、イルカショーが終わる。
その後、マリンピアの隅々までよく見て、売店のコーナーに来た時、時刻は三時半になっていた。
役所は五時までだ。
婚姻届けを出しに行かないとならないから、そろそろ、マリンピア日本海を出ないとならない。俺は、それとなく瑞希に言葉を振った。
「瑞希、婚姻届け出しに行こうか?」
「あ、うん、そう言えば、そんな話もしていたね」
「忘れるなよ。俺たち、今日結婚するんだぜ? まぁ、結婚式とかはできないけどさ。それでも、記念すべき日なんだよ、今日は……」
「そうだね。その通りだよ。今日は記念すべき日。それはわかってる。わかってるよ健君……」
瑞希は売店で売られているペンギンのキーホールだーを手に取った。
「それ、欲しいのか?」
「うん。でもいいかな、未練が残っちゃいそう」
「買ってやるよ」
「え? でもいいよ。悪いし」
「いいから」
俺は強引にペンギンのキーホルダーを購入し、それを瑞希に渡した。すると、瑞希は心の底から嬉しそうな顔を浮かべる。
しかし、一変して、急に暗い顔になった。そのまま、彼女は涙声で話し始めた。
「健君、私嘘ついてた」
「嘘?」
「そう。死んでもいいみたいなこと言ったけれど。あれ嘘なの、本当は死にたくない……、消えたくないよ」
それは、瑞希の心の叫びだった。
人は誰だって生きたい。自殺する人間はいるけれど、そんな人間だって、心の底では生きたがっているのだ。生きられる人間が自殺を選び、わざわざ死んでいく。その一方で瑞希のように生きたいのに生きられない人間もいるのだ。
何という不条理……。
人生っていうのは、時として鋭利な刃物みたいになってしまう。俺は瑞希の言葉を聞き、一気に力が抜けていった。だけど、ここで俺まで弱るわけにはいかない。
俺は、瑞希をそっと抱きしめた。
どうしてなんだろう?
超能力を恨むよ。上条さんが、[接続]の力を与えなければ、こんなことにはならなかったんだ。あの人は悪魔だ。文字通り。瑞希の命を吸い取り、それで生きている。全く酷い話。生きたい人間がここにいるのに、あの人は容赦なく命を奪っていくんだ。
やがて、イルカショーが終わる。
その後、マリンピアの隅々までよく見て、売店のコーナーに来た時、時刻は三時半になっていた。
役所は五時までだ。
婚姻届けを出しに行かないとならないから、そろそろ、マリンピア日本海を出ないとならない。俺は、それとなく瑞希に言葉を振った。
「瑞希、婚姻届け出しに行こうか?」
「あ、うん、そう言えば、そんな話もしていたね」
「忘れるなよ。俺たち、今日結婚するんだぜ? まぁ、結婚式とかはできないけどさ。それでも、記念すべき日なんだよ、今日は……」
「そうだね。その通りだよ。今日は記念すべき日。それはわかってる。わかってるよ健君……」
瑞希は売店で売られているペンギンのキーホールだーを手に取った。
「それ、欲しいのか?」
「うん。でもいいかな、未練が残っちゃいそう」
「買ってやるよ」
「え? でもいいよ。悪いし」
「いいから」
俺は強引にペンギンのキーホルダーを購入し、それを瑞希に渡した。すると、瑞希は心の底から嬉しそうな顔を浮かべる。
しかし、一変して、急に暗い顔になった。そのまま、彼女は涙声で話し始めた。
「健君、私嘘ついてた」
「嘘?」
「そう。死んでもいいみたいなこと言ったけれど。あれ嘘なの、本当は死にたくない……、消えたくないよ」
それは、瑞希の心の叫びだった。
人は誰だって生きたい。自殺する人間はいるけれど、そんな人間だって、心の底では生きたがっているのだ。生きられる人間が自殺を選び、わざわざ死んでいく。その一方で瑞希のように生きたいのに生きられない人間もいるのだ。
何という不条理……。
人生っていうのは、時として鋭利な刃物みたいになってしまう。俺は瑞希の言葉を聞き、一気に力が抜けていった。だけど、ここで俺まで弱るわけにはいかない。
俺は、瑞希をそっと抱きしめた。

