学校という狭い社会の中でなら、即行で断っていただろう。
 そもそも男を好きになる趣味はねーし。女も、バイク以上に興味を持った相手は今のところいないけど。

 だが、そろそろ術後の痛みも引いてきた時期で、まだリハビリも始まってなくて、俺も暇を持て余していた。
 クラスの他の奴らが普通に持ってるスマホやゲームは、目が悪くなると走りに影響するからという理由で買ってもらったことがない。同じ理由で、テレビカードも用意してくれなかったから、同室のオッサン達みたいにテレビを見て時間を潰すこともできない。
 残るはこの、担任が持ってきた大量の宿題だが、学校の授業だってほとんど寝てたのに、一人でこれが解けるわけがない。

 ま、宿題手伝ってもらえるならいっか……。

 何を思ってこいつがそんな突拍子もないことを提案しているのかは理解不能だったが、いつもの短絡的思考で、そういう結論に至った。

 付き合うって、具体的に何するんだ?という俺の質問に、想から出された要望は一つだった。「入院中は僕のことを恋人として接してほしい」と。
 でも、お付き合い3日目の今は、恋人っつーより、家庭教師の先生と生徒って感じだ。