しとしとしと

雨が降ってる。
…どうでもいい。
公園が見えた。

ザーザーザー

雨が強くなった。
ネカフェにでも入ろうかと思って財布を
開けてみたけど、中を見て静かにカバンに閉まった。

…このまま誰にも気が付かれず、消えてしまいたい。

ふと雨が止んだ。上を見上げると傘があった。
「なにしてるんですか、雨降ってますよ。傘は?」

雨の中、自分が濡れてるにも関わらず見知らぬ私に傘をさしている誰かが話しかけてきた。

「…ないです。」
「帰る場所は?」
「ないです」
「お金は?」
「ないです」

しばらく沈黙が続いた。

「…待ってて。」
と言い男性は私に傘を渡すとどこかに電話をかけているようだった。
彼は私に近づき、
「ホテル取ったから。お金は大丈夫です。」


気がついたら朝になっていて、私はホテルのベットの上で倒れるように寝ていた。あれ、ここはなんだ?たしか昨日知らない男性が傘を…考えると頭が痛い。きっとずぶ濡れのまま寝たのだろう。
立ち上がって顔を洗いに行こうとするが、ふらついて上手く歩けない。
どうにか顔を洗い、部屋を出る。
ロビーに行くと男性が声をかけてきた。
「おはよう。ゆっくり休めた?」

「…」

きっと答える前に倒れたのだろう。記憶にない。
再び気がつくと、見知らぬベットに寝ていた。
「気がついた?調子はどう?」
さっきの男性が笑顔で話しかけてくる。
「あの…ここは…」
「俺のお家。勝手に連れてきてごめんね。
かなり熱があるみたいだったから。」
なぜだろう、初対面だとは思えないくらい安心感がある。
「食べれそう?」
彼はベット横の小さいテーブルに、スープを置いてくれた。水も置いてある。

それから彼は2日間看病してくれた。
熱が下がった私は、家出したわけを話した。
うんうん、と聞いてくれた彼。
彼が聞いてくれることで、全て報われた気がした。

彼はドライブや買い物、遊園地など色々な所に連れていってくれた。幸せな時間だった。
そのおかげで、心のモヤモヤは晴れた。
それと同時に、私たちはお付き合いを始めた。

そして私は家に帰った。
スッキリした顔で家出から帰ってきた私を、家族は少しびっくりした様子で出迎えた。
色々話をし、私は彼と住むことになった。
彼の両親にも挨拶をした。

今は2人で遊びに行ったりお家でのんびりしたり、とっても素敵な生活を送っている。

この人と結婚出来たらな〜と考えながら。

これが私と彼が出会った物語。