下駄箱に行くともうすでに遥真がいた。
「おっ、来た。じゃあ行こ?」
 疑問形にしていてもどうせ強制だ。それが遥真のいいところでもあるのだが。けどいつも数人で帰るのに、今日は二人だ。他のやつらも学校に来ていたはずなのに。
「遥真。今日あいつらは?」
「え? うん。」
 会話になっていない。もう良くなった。遥真の様子がいつもと違っていたから。
「なんかあった?」
「全然。」
 やっぱり適当に返事してるだけだ。
「あのさ……俺やっぱ無理。言うわ。好きだ。」
 え? 衝撃的すぎる。なんでこんな遥真が私のことを。頭が真っ白だ。それとは対照的に遥真は顔を赤らめている。
「本当に? 疑ってごめん。」
「俺は嘘を言わねえよ。」
 どうしようか。あの女子の顔が脳裏によぎる。しかし、付き合ってほしいとは言っていない。
「俺としたら付き合ってほしいといえばほしいんけど。玲王を困らせたくない。じゃあな。」
 遥真は転けそうな勢いで帰路を走る。もう姿は見えない。本当にどうしよう。明日からの部活とこれからの対応が困る。返事が出せない。嫌いなわけじゃないのに。

次の日、部活では遥真は何もなかったような対応だった。私が考えすぎなのかと疑ってしまったぐらいだ。特に異変もなく、時間だけが流れて行ってしまっていた。そろそろ返事も考えないといけないが、付き合いたいわけではないのに付き合うのも申し訳ない。いいよって言ってもなんか違う。遥真に応えるためにはどうすればいいのか。自分でもなにがしたいのか、どうするのかが理解しきれていない。

私は決心した。こんな私でいいのなら―。こんな私が役に立てるのなら―。返事に「いいよ。」の三文字を返した。彼は飛び跳ねて喜びを隠せきれていなかった。「今日から俺の彼女だね。」と言われ少し照れる気もした。今日からというものあまり実感が湧かない。その日からというもの、慣
れていないことばかりで非常に疲れる日々を送っていた。

それからというもの遥真とはとても順調で、楽しく過ごせている。クラスが違っても挨拶や、話しかけに行くことも心掛けて目で追う日々が続いた。遥真も
「玲王になにかあったら俺が全力で守る。」
なんて言ったりしちゃっていて。漫画の名ゼリフのようだ。そんなとこも私自身惹かれていき大好きで、最近なんて夜通話しあって。今まで想像してもしきれなかった日々が続いていつの間にか一ヶ月なんてとっくに過ぎていた。遥真は私の気持ちを理解してくれている。受け入れてくれている。そんな様子が目に見えて。このまま一生死ぬまで続くような気がして。一生続きたいという想いも込めて、遥真と目が合うたび顔がニヤけた。