「あ……ごめんなさい、時計ばっかり見て」
「いや…もしかして、今日何かあった?」
「…いえ、何もないです」
私は笑顔で取り繕う。いつもこうだった。
「ならいいけど」


結局、話し込んでしまい、塾に間に合う時刻ではなくなってしまった。
時刻は七時。夏の夕日が地平線の端っこで輝いている。
「じゃあね」
「はい」
別れてから気づく。やっぱり私、とんでもないことしたのでは!?
そんな後悔も遅く、スマホの電源を入れると信じられないほどのお母さんからの着信があった。お父さんからも着信がある。


「ただいま……痛っ!?」
玄関の扉を開けて中に入った瞬間、頬を思いっきり引っ叩かれた。
「塾ほったらかしてどこ行ってたのよ!!もう、バカじゃないの…!?」
「……」
「夕飯食べたらすぐ、勉強しなさい」
「……」
「明日は茶道のお稽古の後、振替授業入れてるからね」
「え……」
「だから、明日こそはすぐ帰ってきなさい」