お母さんはそう言うと、私をぎゅっと抱きしめた。
「ごめんねっ、お母さん、ずっと奈央の気持ちに気付いてあげられなくて…」
それから少し、お母さんと一緒に泣いた。


「……」
翌朝。家族で朝食をとっていると、お父さんが
「昨日の事だが」
と話を始めた。
「少し、頭を冷やして考えたんだ。私たち親が、奈央のためにしてあげられることってなんなのだろうか、と。そして、思ったんだ。奈央の幸せを願うことは奈央に価値観や将来の夢を押し付けることではない、と。奈央のやりたいことを精一杯応援してあげるのが、親の役目なんじゃないか。お母さんの言う通りだった」
お父さんはそう言うと、優しく笑った。
「今まで、ごめんな。私たち両親は奈央のやりたいことをこれからは応援しようと思う。奈央も、その目標に向けて、一生懸命頑張りなさい」
「！！」
私は大きく目を見開く。まさか、そんな風に言ってもらえるなんて思ってもみなかった。