「あなたが奈央のことを思ってそう言うのは、よく分かる。だって、私もついこの間までそうだったもの。だけどね、この間、奈央が部屋で一人でファッション誌を読みながら勉強してるのをたまたま見かけたのよ。すごく生き生きしてて、楽しそうで」
そこまで言うとお母さんはにっこりと笑った。
「私たちは、奈央の幸せを願って、色々押し付けすぎたかもしれないわね。奈央がホントにやりたいことで、そのためには努力を惜しまないって言うなら、私は全力で応援するわ。あなたも、それでいいんじゃない?」
知らなかった。お母さんがそこまで思ってくれているなんて。
私はなんだか泣きたくなった。無性に。
「……少し、考えさせてくれ」
お父さんはそう言うと、部屋を出て行った。
扉が閉まったとほぼ同時に張りつめていた空気がほどけ、私の涙腺は一気に崩壊した。
「お母さんっ……」
泣いても泣いても、涙は止まらなくて。ずっと溢れてきて。
「ごめんねっ」