家の前でふと考える。そうだ、今なら―—。
私はある決心をして、玄関の扉を開けた。

「あら、早かったじゃない、お帰り」
「ただいま」
「すぐご飯にしようか」
「少し、話があるんだけど」
私は震える手をぎゅっと握りしめながらそう話を切り出した。
「分かったわ」
お母さんは私の真剣な表情を見て、少しだけ顔を強張らせた。
「お父さん、もう帰ってきてる?」
「うん、今テレビを見てるけど」
「そっか」
私は家の中に上がると、迷いなく真っ直ぐにリビングへ進んだ。
「奈央、お帰り。遊んできたあとは勉強しなさい。そろそろ夏期講習始まるから」
「…あのねっ、お母さんとお父さんに、大事な話があるんだけど」
私は、お父さんとお母さんが座る椅子に向き合って話を始める。
「―—私は、将来弁護士にも医師にも、なりません」
「!?」
お父さんとお母さんは目を大きく見開く。
「ずっと、言えなかったけど。将来の夢が、できたから」