「あー……やばい、緊張する」
当日。俺は落ち着かなくて、部屋中を歩き回ったり、どうせ対して意味もないのに、手の平に人と三回書いて飲み込んでみたりした。
だけど、どうにも落ち着かなくて。
「行ってきます」
絶対早いのに、約束の時間よりも、三十分以上早めに家を出た。駅なんて、歩けばすぐそこなのに。
「やっぱり、早かったか」
当然ながら駅に奈央の姿はなく、俺は暇を持て余したので、ただ立っていても落ち着かないし、その辺を歩いて待っていることにした。

戻ると、奈央は駅にいた。
俺は、深呼吸をしてから、奈央のところへ行った。

それから、楽しい時間もあっという間に過ぎて―—。

「綺麗、だね」
東京湾が見られる公園に来て、奈央がそう言う。
俺はドキドキする気持ちを抑えながら平常心を保っているかのように装って
「うん」
と言った。
それから、海を眺めた、フリをして、奈央のことが気になってしょうがなくて、
海よりもずっと奈央のことを見ていた気がする。