「えーと、ここが理科室で……こっちが家庭科室。それで…」
放課後、私は千波くんに学校中を案内した。途中、お母さんからの着信がうるさいので、ホントはいけないことだと分かっていたが、スマホの電源を切った。


「ホント助かった。ありがと」
「いえ……私は、学級委員なので」
もともと、学級委員も自分から好き好んでやっているわけでもない。お母さんが、学級委員をやりなさい、と言ってからずっとやっている。
「帰り、まだ時間ある?」
「え…?」
「お礼にアイス奢る」
「え、いや、そんな…。学校案内しただけですよ?仕事ですから」
そう言うと、千波くんは首を横に振った。
「いや、奈央にはこれからもお世話になると思うし、今日のことも、お礼したいから」
「えぇ…?」
帰らなければ怒られる。今すぐ急いで帰ればギリギリ間に合うかもしれない。だけど、私はなんだか塾に行く気にどうしてもなれなかった。
「じゃあ……」