頭の中にあるのは、奈央のことだった。
ふと、奈央の笑顔が頭の中に映る。黄昏時の空みたいな、綺麗で優しい笑顔。
「お兄ちゃん何一人でにやけてんの、なんか、キモイよ」
穂波のそんな声によって、現実に引き戻される。
「穂波、キモイ、はないだろ…」
「いや、事実を伝えただけなんでね」
自分でも、にやけてることくらい分かっている。だって、それくらい奈央の事が好きなのだから。奈央は自分にとって欠かせない存在で。
奈央の笑顔、声、言葉、動作、どれも全部愛おしくて。こんな気持ち、初めてで。
「ごちそうさまでした」
俺はそう言って、お皿を下げると、また自室に戻った。


「時刻表ってどうやって見るんだっけ?」
風呂も入ってきて、全部済ませた後、世間知らずな俺はまた次の壁にぶつかっていた。
パソコンを起動させ、マップでスカイツリーの最寄り駅から東京湾が見える公園までの道のりを調べ始めてかれこれ二十分が経とうとしている。
「なんだよ、浅草線って。ゆりかもめ……?あー、マジで分かんない」