「え?あ、はい」
「なんか習い事でもしてんの?」
「ああ……そうですね。なんで、ですか?」
「いや、なんとなく。雑談」
こうして、私は千波くんと雑談を始めた。
「何習ってんの?」
「えーと…月曜日は塾、火曜日は茶道、水曜日はピアノ、木曜日は塾、金曜日は英語、土曜日は塾、日曜日は、特に習い事はないけど、一日中勉強、ですね。お母さんが習い事とか全部決めちゃったから」
幼いころから、毎日こんな感じだった。碌に遊んだこともない。ただ同じことをこなすだけの一週間。
「……奈央は、なんかやりたいことないの?」
「……え?」
まさかその質問をされるなんて、予想外だった。
「いや、出しゃばった質問だけど、奈央はこれでいいのかなって。全部お母さんが決めたって言ってたし」
「……そうですね…。私、ホントは将来洋服に携われる仕事に就きたくて。ファッションデザイナーとか。でも、お母さんやお父さんからは、医者とか、弁護士系一択って言われてて」