「思っているけど……誰かが傷ついているのに優越感に浸ってるみたいな感じになるのは、それは何が違うのかな? 今まで後藤さんがしてきたことと同じなんじゃないかな?」
「それは違うよ」
「でも……」
「やっぱりまだ迷路の中じゃん」
ユイくんの言葉に何も返せなかった。
考えていた。
わたしが普通にして、それでも返してくれないのは、それが嫌だから。
後藤さんはもちろん、ミライちゃんにとっても不快に思うことだからなんじゃないか。
「莉緒は自分の決めた信念を貫けよ。それがいいって思ったんだろ?」
「だけどそれで傷つく人がいるなら……」
「やめる?」
「そう、だね」
「莉緒は優しいな」
「でも、気づいてほしい。忘れないでほしい」
「うん」
「わたしにはまだ言いたいことがある」
本当に伝えたいことがある。
わたしが何に傷ついたのか。
つらかったのか。苦しかったのか。
「最低だけど、わかっているのに、続けるっていうのはどう思う?利用しようとしてるんだけど……」
やりたいことがある。
やらないといけないことがある。
わたしの問題に、自分で決着をつけるために。
思いをぶつけるために。
「莉緒が考えてすることに反対はしないよ。だって間違っちゃいない」
ほら、ユイくんの言葉には力がある。
わたしの背中を押してくれる。
「全部間違っていないんだよ。考えた結果の間違いは絶対に次につながる。だから間違いじゃないんだ」
一定の間隔で流れていく街灯の橙色の光。
点々とユイくんの横顔を照らし影を作る。
その顔はやっぱり真剣で、でもやわらかくてかっこよくて思わず見惚れた。
「な?」
「うん!」