「この世界は案外シンプルで、変に考えすぎないほうがいい。考えすぎるとわけわかんないからな」
「混乱してた。迷路だよ」
「なんなら、今も迷路から抜け出せてないかもな。人生ってそういうもんだろ」
「ユイくんまだ二十二なのに、人生語っちゃうんだ」
「二十二年の人生はそうだったよ」
「じゃあ、これからはもっと道がたくさんあってこんがらがって、迷っちゃうかもしれないね」
ポテトを食べてまたシェイクを飲んで、口の中が甘くなる。
「今のほうが道はたくさんあるかもしんねぇよ」
「そうかな?」
「ポテトとシェイク、どっちかひとつしかもらえないとしたらどうする?」
「えー、このふたつの組み合わせがいいのに。ポテトのしょっぱさだけでも、シェイクのやわらかな甘みだけでもだめなんだよ」
「若いうちは選択肢が多いよ。なににしても。俺でももうだいたい道は決められてるし」
「いまのポテトとシェイクのたとえって必要だった?」
「あんまりうまくたとえに使えなかっただけ」
「なら、わたしの悩み損じゃん」
軽く冗談をはさみながら話すのも、ユイくんとだから楽しい。
いつもかっこよくてクールなユイくんがこんな意味わからないことを言ったりもするんだもん。
おもしろいよね。
「まぁ年取るとどっちも食べられないよ。カロリー的に。そんな食い方できるのいまだけ」
「それでもわたしはこの食べ方続けるもん。そのための努力はするよ。……たぶんってこれ何の話?」
「どんどんズレていくな」
「ユイくんのせいじゃん」
「俺か」
ははっとおかしそうに笑うユイくん。
笑ってる。
いつもわたしの話を真剣に聞いて、答えて、悩んで、怒って、悲しんでいたユイくんが笑ってくれた。
今、笑っている。
こうやって話せることが、すごくすごく嬉しくてわたしも頬が緩む。
それから話は脱線し続け様々な話をした。
そんな日もたまにはいいかな。
そう思う。
「そろそろ行くか」
「そうだね」
こんなに笑ってユイくんと話したのは小学生以来かもしれない。
なんだか昔に戻ったみたいだった。
純粋に楽しい気持ちでいっぱいになった。
前から車を入れたからバックで方向転換をしてから車がスピードにのっていく。