「理想は持ち続ける。なりたい自分になる」
「どんな?」
「自分がされて嫌なことは人にはしない。芯をもった人になる」
周りに流されない。
自分の思いは常に持ち続けたい。
まるで小学生の時の道徳の授業だ。
十七年間生きてきて、悩んで出た答えが小学生の時に出た答えと変わらない。
きっともう、わたしの核の部分。
人が嫌がることをしてはいけません。
相手の気持ちを考えよう。
思いやりの気持ちを大切にしましょう。
これは大人の洗脳かもしれない。
小学生の時に刷り込まれていたのかもしれない。
だとしても受け入れた。
しっかりと考えて、いまの自分が選択して出した。
これが、わたしの答えだ。
「頑張れ。俺はずっと莉緒の味方だから」
まっすぐな強い言葉に隣を見れば、空を見上げる横顔が綺麗に照らされた。
月が出てきた。
大きくて明るくてまんまるの、満月だ。
「うん」
頷いてから、わたしも空を見上げた。
大きな満月はわたしたちを優しく見守ってくれていた。