「今日の天気は快晴、ところにより雨」
「ブハッ。やめろって」
下品に笑う声に全身の毛が逆立つような感覚になる。
――悔しい。
だけど、言い返すことができない。
そんな勇気がない。
自分が惨めで情けない。
俯いてこのふたりが去っていくのを待つしかない。
それしかできない。
――我慢。
考えるにはいちばん簡単で、実際にするにはいちばん難しい。
「戸田行くよ。こんなのほっといてさ」
「うん」
……やっとだ。
自分から絡んできたくせに『ほっといてさ』なんていう物言いにはムカつくけど、それ以上に開放される喜びのほうが大きい。
時間にすれば話した時間なんてそんなに長くないけど、体感ではすごく長くて鉛のように重たい時間だった。
わざと強くわたしの肩にぶつかり通り過ぎていく。
ぶつかられた勢いでよろめき、横の壁にもたれかかった。
「うわ最悪。濡れたんだけど」
「あほじゃん」
わたしに言ったのか、後藤さんに言ったのかはわからない。
流れ的には後藤さんへの返答に聞こえるけど、戸田さんはわたしの顔を覗き込んでいたから。
突然の至近距離の戸田さんの顔にビクッと大きく肩を揺らした。
そんなわたしにはお構いなしで、ワイシャツの胸ポケットに手を入れられる。
予想していなかった行動に、驚いて戸田さんを見つめた。