そのまま急な坂やカーブを通り、頂上の広い駐車場に着く。

この前も同じだったけど、わたしたちしかいない。

堂々と真ん中あたりに停める。

広い駐車場にポツンと一台の車を停めるなんて贅沢だ。

前と同じようにトランクを開けて、そこに並んで座った。

ビニール袋からお団子と飲み物を出す。

曇り空を見上げてお団子を食べる。


「これは何見?」
「雲見、かな?」
「楽しい?」
「ユイくんが隣にいたらそれだけで楽しいけど」


言ってお団子をパクリ。

三色団子とみたらし団子の二種類を買ってくれているあたり、ユイくんのほうがノリノリみたい。

せっかくの満月が見れないのは残念だけど。


「……莉緒」
「んー?」
「はぁ……何でもない」


ため息をつかれてしまった。

意味がわからず首を傾げてユイくんを見るけど、ユイくんも雲を見上げてお団子を食べていた。

お団子を食べたら喉が渇き、ミルクティで潤す。

お団子のほうが甘くて、ミルクティがいつもより渋く感じた。


「みんな、いろいろ考えてるんだなって改めて思ったことがあったよ」


前触れもなく話を初めてしまったけど、ユイくんがこちらに耳を傾け集中したのがわかった。

今日の美紅ちゃんの話、大野くんと話したことを細かに伝える。


「みんなそれぞれに自分だけの答えを見つけているんだなって思った。そうやって人は乗り越えていくんだね」
「そうだな」
「周りの人に恵まれたなって思うよ。いまのわたしの周りには素敵な人ばかり」
「それは莉緒が呼んだんだよ。類は友を呼ぶって本当だから」


誰もが知っている有名なことわざだ。

あんまりしっかりとは説明できないけど、気の合う人や似ている人は自然に集まるっていう感じの意味だった気がする。


「素敵だと思う人が周りにいるなら、それは莉緒が素敵な人だからだよ」


はっきりとそう言われると照れてしまう。

自分ではあまりそう思うことはないし考えたこともないけど、ユイくんに言ってもらえるのは素直に嬉しい。

ユイくんがすごくすごく素敵な人だから。


「莉緒はこれからも莉緒のままでいてほしい」
「わたしのまま?」
「うん。自分らしく莉緒らしく」


コーヒーに口をつけゆっくりと飲んでいるシルエットが、暗さに慣れた目でわかる。

缶を置くのを見てから、空気を吸って吐いて、もう一度吸う。