「だから莉緒ちゃんのこと、どうにかしてあげたいと思ったけど、何をすればいいのか、どうしたらいいのかわからなくて結局は見てるだけになってた。今こんなこと言っても、ただの綺麗事にしか聞こえないかもだけど」


視線を逸らして無理やり笑顔を作る。

きっと重くなりすぎないようにしてくれている。

この子は本心だ。

わたしのことを思って言ってくれている人の言葉はちゃんと伝わるから。

やっぱり本当の言葉だとわかるんだ。


「だからせめて、あの時のことが忘れられるくらい楽しい思い出で埋められたらいいなって。そのお手伝いをしたいなって思ったの。乗り越えるためには時間がかかるけど、そばに誰かがいてくれたら心強いでしょ?」
「腕組むなよ、暑苦しい」


そういうことなんだ。

今明るくいられているのは、そばにいてくれる人がいたから。

次は自分が救う立場になろうとしているんだ。

歪んでいたのはわたしだった。
荒んでいたのはわたしだった。

こんなにも純粋な気持ちに気づかず捻くれて、斜に構えた見方をしていたのはわたしだった。


「最初はそんな感じだったけど、今は純粋に莉緒ちゃんと仲良くなりたい気持ちのほうが大きいかな」
「まぁ深く考えないでっていうのは難しいかもしれないけど、うちらといる時くらいは肩の力抜いて気楽にいようよ」


きっとたくさん苦しんで悩んで、それでもこうやって自分なりの答えを見つけたんだ。

正解なんてない。

その中で、自分だけの答えを出して次へつなげている。


「ありがとう。美紅ちゃん、悠里ちゃん」
「あ、名前……」
「初めて呼ばれた」


なんだか照れくさくて笑うと、二人も優しく笑ってくれた。

胸がじんわりと温かくなった。

今までの自分が情けない。申し訳ない。

だけど、気づいたからには大切にしていこう。

これからも優しさに気づける人であるために。


それから三人でたくさん話をした。

美紅ちゃんと悠里ちゃんは幼なじみで、昔の話をたくさんしてくれた。

わたしも自分の話をした。

それだけですごく楽しいと思った。

簡単なことだった。
単純なことだった。

だけど、何より勇気がいることだった。


「食堂行こう」
「今日は麺類の気分だな」
「わたしノート提出してくるから先に行ってて」
「了解」


提出物のノートを持って、職員室に向かう。

職員室前に並ぶボックスにノートを入れて任務完了。

食堂へと足を向けた。