「莉緒にはそう見えるんだな」
「だってそうでしょ?」
わたしの問いにユイくんは答えなかった。
ちょうどウインカーを出して曲がっているところだったからか、あえてかはわからないけど。
「ユイくんはどう思った?」
右に曲がり進み始めるとすぐに波の音が聞こえた。
シーサイドラインに入ったみたいだ。
昼の海は好きだけど、夜の海は落ち着く気もするけどやっぱりなんだか怖い。
「世界が荒んでいたとしても、自分の心まで同じになる必要はないよな」
波の音と車内の音楽とユイくんの声。
全てがこの空間を非日常へと連れて行く。
ユイくんの言葉はわたしの心にどんと重く積まれた。
今日のことを思い返してみる。
「わたし、性格悪いかもしれない」
「どうして?」
「クラスメイトが手のひら返して後藤さんを非難して、本当はわたしを助けたかった、なんて言った時に嘘だって思った。吐き気がした。気分が悪かった」
「だとしたら、そうなんだよ。莉緒が嘘だと思ったらそれは嘘だ」
耳に心地良い低めの声はわたしを決して否定しない。
広く深い海のように受け入れてくれる。
「伝わっていなかったらそれは嘘だ。本当に助けたいやつは助けたかったなんて言わない。助けるんだよ」
「本心だったら?」
「それでも、結果が同じなら変わらない。実際に莉緒は救われてないんだろ?」
「……うん」
そう言ってくれただけで気持ちが軽くなった、なんてことはなかった。
救われたとも思わなかった。
「正直、わたしのことを本気で思ってくれている言葉とそうじゃない言葉は、わたしが一番わかる」
気持ちって不思議で相手に伝わるものだ。
きっと、それはわたしの気持ちの状態もあるんだと思う。
それでもあの時あの瞬間のわたしには不快にしか感じられなかった。