「食べ終わる?」
「大丈夫」
「じゃあ行くぞ」


わたしの意見を聞いてから車を動かす。

ゆっくりと動き出し加速する車は夜の闇をどんどん進んでいく。

メロンパンを食べながら窓の外を見るもシルエットしか見えない。

トンネルに入るとオレンジ色の空間で上にある丸いオレンジ色のライトがどんどん迫ってくるようで、まるでタイムマシンに乗ってタイムリープでもしているのかと錯覚を起こした。

トンネルを抜けると静まり返った住宅街が横にありそこをバラード曲が響く車で通っていく。

メロンパンを全て胃に送ってから、甘いいちごみるくを飲む。

果肉入りで甘酸っぱくておいしい。

お腹を満たしてからユイくんに今日のことを報告した。


「それで、莉緒はどう思ったんだ?」


わたしの話を聞き終わった第一声がそれだった。

運転をしながらなのに本当によく聞いている。

起こった出来事をできるだけ客観的に話した。

登校してすぐに後藤さんに絡まれて、髪の毛が当たってからカッターを取り出し、わたしに向けてきたのを戸田さんが止めて、後藤さんと戸田さんが揉めているとクラスメイトは後藤さんに初めて反論し非難したこと。

先生が来て白い紙切れに知っていることを書かされ、全員順番に面談をしたこと。

そんな事実を淡々と伝えた。

けど、ユイくんはすぐにそれに気づく。


「わからない」


それが正直な感想だった。

ただ、ひとつ。


「この世界は汚れている。荒んでいる。それを当然のように受け入れてしまっている」


当たり前すぎて疑問にも思わない。

きっかけがないと考えない。


世界は理不尽だ。

そして、それが当たり前だから流される。


仕方ない。妥協。諦める。同調する。

理不尽を受け入れる。


じゃあ疑問をもってしまったらどうすればいいんだろう?