両親には言わないでほしいということを伝え、それだけは約束してもらい面談を終えた。

外に出ると日も暮れて暗い闇に月が浮かんでいた。

光り輝く月は低い位置にあり、高い建物に少しかぶっていてやる気がないように見える。

それを隠すように薄い雲が流れてきて覆ってしまった。


これから、わたしはどうなるのかな。

今回の件はけっこうな大事になっている。

怪我人が出た。

傷は浅かったみたいだけど、傷の大きさなんて関係ない。

あの出来事において、怪我人が出たということが問題である。

最後はクラスメイトが後藤さんを非難していた。

こんな醜い世界でわたしは何になるのだろう。

何になれるというのだろう。

何を思って生きていくのだろう。


「お疲れ」


とぼとぼと歩き校門を抜けると聞き慣れてきた声が届き視線をそちらへ向ける。

窓を開けて顔を覗かせているのが、再び現れた月に照らされてわかる。

優しく笑っているユイくんに、今まで緊張して上がっていた肩の力がいっきに抜けた。


「乗って」


ユイくんをじっと見つめて動かないわたしを促す。

シートベルトを外して運転席から手を伸ばすと助手席のドアを開けてくれた。


「とりあえずコンビニ寄らせて」


わたしが乗るとすぐに走り出す車。

シートベルトをまだつけていなかったため、ピーピーと車がうるさく教えてくれるから、それに焦ってなかなか上手にはめられなかった。

何回目かの挑戦でカチッと音が鳴り、うるさい警告音が止んだ。

その瞬間、エンジン音に交じってぐぅ~と低い音が聞こえた。


……ユイくん?


ふとユイくんを見るけど、もちろん前を向いていた。

もしかしなくてもお腹の鳴った音だろう。

お腹が空いているのかな?

だから今日は車から降りなかったし、すぐに車を走らせたんだ。

すごくすごくお腹が空いているのかもしれない。

いつもユイくんはわたしより先に来て待っていてくれているから。