「莉緒は自分を責めすぎ。大野に自分の気持ちを伝えただけなのに、それを八つ当たりって言う」
「だってそれは、大野くんが味方をしてくれているから」
「なら、味方を苦しめてもいいって言うのか? 莉緒が言ったこと、大野はちゃんとわかってる。伝わってるよ」
「どうしわかるの?」
「わかるよ。簡単だ。だって莉緒の味方をする人だから」


言い切ってしまうユイくんの声はやっぱり優しかった。

結局理由にはなっていないけど、ユイくんの言葉だからか不思議とすんなり受け入れられる。

わたしはもう歪んでなんかいない。

強い味方がいれば、優しい言葉をかけてくれる人がいれば、こんなにも簡単に人は真っ直ぐになれる。


「莉緒なら大丈夫だ」

わたしの頭に手を置きながら力強い言葉。

大野くんに『大丈夫?』って聞かれた時はすごく嫌な気持ちになった。

大丈夫なわけがないって。

『大丈夫』ってその言葉自体が状況に合っていなくて嫌なのかと思っていたけど、そうじゃなかった。

わたしは聞かれたいんじゃない。

『莉緒なら大丈夫だ』って言われて、心が落ち着いた。
力が湧いてきた。

わたしは断言してほしかったんだ。


「うん!」


力強く頷くと、ユイくんから息が漏れるような小さな笑い声がした。


「じゃあ、帰るか。シートベルトして」


再び車は動き出す。

暗い闇の世界だと思っていたけど、雲から顔を覗かせた月はすごく明るかった。

闇を照らす希望のように。