どれだけ泣いたかわからない。

でも、たくさん泣いた。
涙が枯れるほど泣いた。

涙に限界はあったらしい。

枯れるほど泣いたら、心が軽くなっていた。

きっと泣くだけではこんな気持ちにはなっていない。

ユイくんが優しく包み込んでくれたから、『甘えていい』って言ってくれたから、ユイくんが隣にいてくれたから。


「ユイくん、昨日はごめんなさい」
「もういいよ。莉緒が莉緒でいてくれるならもういい」
「……ユイくん、あのね」


ポツリポツリと今日のことを話した。

言葉にしていくだけで、ぐにゃぐにゃに歪んでいた気持ちが、絡まっている糸がするっとほどけるように徐々に戻っていく気がした。

ふとナビの液晶に出てる時間を見ると昨日同様、夜の十一時を回っていた。

ユイくんを怒らせ悲しませてから丸一日が経った。

だけど、昨日のわたしとは気持ちが違う。

たぶん、ユイくんも違う。


「そうか。話してくれてありがとう。怪我はどんな感じ?」
「少し痛むだけだから大丈夫だよ」
「莉緒はよくがんばってる。がんばりすぎなくらい」


ユイくんの心配が伝わってくる。

そっとわたしが蹴られたお腹に触れられ、くすぐったくて身をよじった。


「……痛かった?」
「くすぐったかった」
「そっか」
「うん」
「みんな自分の正義があって、それを貫いているだけなんだ。良くも悪くも」


正義は人それぞれ違う。

みんな自分の中で絶対で譲れないものがある。

それが他人に対して悪かもしれないのに、自分の正義に従って行動する。

疑わないんだ。

正義は常に正しいものなんだと。

だから正義なのだと。

自分の核となる部分だから、簡単に曲げられるものじゃないし曲げていいものでもないのかもしれない。

ずっと信じてきたもので曲げてしまえば、それはこれまでの自分を否定するような気になるから。