今、逆の立場になってみるとそれはつらいことだけど、ほっといてくれたほうが幾分かマシだと思う。

大野くんみたいな人気者がわたしを気にかければかけるほど、おもしろくないと感じる人は増えていく。

それなら無視してくれているほうが害は少ない。

けど、大野くんの中の正義はそうではないらしい。

守るってことはイコールで気にかけて話しかけることのようだ。

大野くんの正義感によってわたしや周りがどんな影響をもたらすのか。
それを本人は何も知らない。

わたしは大野くんの行いをやめてほしくて、周りはそのイラつきをわたしにぶつけて、けど大野くんだけはやりたいように伸び伸びしている。

そんなの、ただの自己満足だ。


「俺、時田を守りたいんだけど」
「それならわたしのことはほっといて」
「どうして?」
「どうして……?」


はは、と乾いた笑いが漏れてしまった。
もう止めることはできない。


「逆にさ、どうして気づいてくれないの? 大野くんがわたしに話しかけることでこの状況が悪化しているってことに。どんどん敵が増えて学校に居づらくなっていることに! 早く気づいてよ! 迷惑なの‼」


何も気づかない大野くんに我慢の限界を超えて、ヒステリックになって叫んでしまったあとに我に返る。

みんなの視線があれほど嫌だと思っていたのに、自分から注目を浴びるようなことをしてしまった。

気づいた時にはもう遅い。
周りを見るとさっきよりも鋭く冷たい視線。

ゆっくりと大野くんに視線を移すと、今にも泣きだしそうで見たことないほど悲しい顔をしていた。


「……ごめん、俺気づけなくて。空気読めてなかったよな。時田の気持ちを考えてなかった。俺が時田と話したくて、元気づけたくて、周りのことを気にせず時田に近づいてた」


小さな声で謝罪と本音を口にする。

大野くんに悪気がないことなんて、最初からわかっていたはずなのに。

結果的に悪い連鎖となりわたしに降りかかっていたとしても、大野くんがわたしのことを守りたい、助けたいっていう気持ちは本物だってわかっていたのに。

一方的に大野くんを責めて傷つけた。

完全にわたしの八つ当たりだった。

今さら後悔して反省したところで後の祭りだ。