ユイくんを怒らせて悲しませて、ただでさえ気分は落ち込み気味の中。
始まりは担任の何気ない一言だった。
「なんか時田の顔疲れてるな? 勉強なら感心だけど、ほどほどにしとけよ」
朝のホームルームの時に突然、何の前触れもなく言われたセリフ。
いつもは絡まれたりしないのに、わたしが話を聞いていなかったからか。
はたまた、わたしがすごい顔をしていたのか。
それともわたしの現状を知っているのか。
理由はわからないけれど、名指しで声をかけられてしまった。
『勉強なら感心だけど、ほどほどにしとけよ』
なんて後付け程度に言っていたけど、周りからするとそんなセリフが耳に入るわけがない。
特にわたしのことをよく思っていない人は。
人間、悪いことしか残らないようになっている馬鹿な生き物だ。
みんなの耳にはわたしの顔が疲れている、ということだけが残っている。
わたしが疲れる本当の理由を知っているから。
何気ない担任の一言が、何より余計な一言だった。
「しんどいアピールすんな」
「気づいて助けてもらおうとかキモすぎ」
「悲劇のヒロインごっこ順調だね」
いつのまにか後藤さん以外のクラスメイトもわたしに聞こえるように嫌味を言ってくるようになった。
日に日に敵が増えていく。
基本的には大野くん親衛隊の人たち。
けどそれ以外にもストレス発散でわたしに暴言を吐く人もいる。
わたしは親友と大野くんを好きな人から恨まれ、カースト上位の後藤さんに目をつけられた。
たくさんの人を敵に回したせいで、このクラスはわたしを嫌うことが正当化されたみたい。
この学校でわたしは孤独だ。
「顔が疲れてるけど、大丈夫?」
「ちょっ、戸田。馬鹿にしすぎだって……ギャハハ! 無理だ。我慢できないわ。おもしろすぎ‼」
クラスメイトがわざわざわたしの隣を通って順番にボソボソと嫌味を言う中、わたしの顔を覗き込みやっぱり感情の読み取れない顔でそんなことを聞いてきた戸田さん。
それに続き、下品な笑い声を上げる後藤さん。
『馬鹿にしすぎ』だと言う後藤さんのほうが、戸田さんの何倍もわたしのことを馬鹿にしているように伝わってくるけど。
いや、確実にわたしを見下して馬鹿にしている。