「……ごめんなさい」
簡単に口にしてしまった言葉に今さら怖くなった。
謝ることしかできない。
だけど、わたしが謝ったところでユイくんは怒りを鎮めてなんてくれない。
わたしのためだ。
わたしだからだ。
「自分を責めるなよ。傷つけるなよ。そんなこと考えるなよ。莉緒の気持ちを莉緒が一番に守ってくれよ」
〝死〟という悪魔からわたしは自分を守らなくてはいけない。
一度狙われると狙われやすくなる。
その考えが頻繁に現れるようになってしまう。
嫌なことがあってもどうしようもなくて、苦しい気持ちのまま踏ん張り続けると突然パチンと何かが壊れるように全てがどうでもよくなる。
この世界に未練がなくなる。
『死にたい』って不思議と思ってしまう。
そういえば、ユイくんと再会する直前もそうだった。
周りのいろいろなことは忘れて、全てを終わらせてもいいと考えた時だ。
心が病んでいると、すぐに悪魔が囁く。
わたしは気づかないうちに悪魔の囁きに傾いていた。
だから、こんな疑問を口にしてしまった。
きっとすでに限界だから。
無意識に終わりを求めていたから。
〝死〟に興味なんてもっていいはずがない。
一度考えると抜け出せなくなる。
俯いてスカートをぎゅっと強く握った。
しわくちゃになろうが関係ない。
いつからか自分の弱さは変わらず、わたしの背中に重くのしかかっている。
「俺にはどうすることもできないんだよ。できることなら莉緒と変わってやりたいし、常にそばにいて守ってやりたい。でも、できないから……」
あぁ、わたしはこんなにも優しい人を傷つけた。
悲しませてしまったんだ。
ユイくんの心の底から湧き上がってくる悔しさとやるせなさが入り交じった、叫びにならない叫び。
ユイくんの感情に車の振動がリンクする。
安全運転で乗り心地が良かったはずなのに、今はなんだかクラクラして酔いそう。
道路の小さな凹凸にも気を遣って運転してくれていたのかも、なんて今になってやっと気づく。
ユイくんは常にわたしのことを考えてくれていたのに、わたしが全くユイくんのことを考えられていなかった。
結局は自分のことしか考えられない。
情けない自分。
どんどん嫌いになっていく。
いつもより揺れが多いし強いけど、ユイくんがそこまで気を配れる心境ではないということがわかる。