「莉緒はどうしたい?」
「どうしたい……のかな……」
「さっき、俺に話すことで感情を表に出した。今度は莉緒の心の声に耳をすませて」
「心の声?」
「うん。我慢はもうやめた。だから、今なら本当の莉緒の気持ちと向き合えるはずだよ」
本当の、わたしの気持ち……。
ぜんぶ、我慢して気にしないようにして、どうでもいいって流そうとした。
わたしの気持ちを無視して、抑え込んだ。
「……変わりたい」
「うん」
「わたし、ずっと変わりたかったんだ。だんだん自分の気持ちも言えなくなって、ただ周りに合わせるだけ。すべてを受け身でテキトウに過ごしていた」
そのせいで、ミライちゃんとの関係も悪くなってしまった。
本当は友達をやめたくはなかった。
ミライちゃんにも本音を言えずいつも合わせて、なんとなくで友達をやっていた。
そんなのは友達ではないって、関係が壊れたあとに気づいた。
もう、そんなことを繰り返さないためにも変わりたい。
「思えば、小学生の時がいちばん良かった。何も考えずに、クラスに馴染めていない子を誘って一緒に遊んだりできた」
損得なんか一切ない。
ただ一緒に遊びたい、みんなで仲良くしたい。
その一心でわたしは俯いていた子に手を差し伸べることができる小学生の女の子だった。
きっとこれが、わたしの理想の人物像。
「でも、今のわたしには何もない」
いつから変わってしまったのだろう。
いつから狂ってしまったのだろう。
味方は誰もいない。
今のわたしは勇気もなくて自分が嫌いな自分になっている。
理想と現実のギャップに打ちのめされて、さらに周りからの敵意に押しつぶされそうな日々。
毎日毎日、無視や嫌がらせを受ける。
わたしの居場所はそこにはない。
そこから抜け出したいけど、簡単じゃないことは知っている。
ターゲットが変わることを待つ以外、自分が助かる方法を知らない。
だけど、今の世界はおかしい。
このままじゃだめなんだよ。
苦しみを誰かに渡すことで得る平穏は、本当の解決にはならない。
それで満足するような人間にはならない。
思い出したから。
ヒーローのように、何も考えずに行動できた自分を。
当たり前のように誰かに手を差し伸べることができる自分がいたことを。