クラスメイトからは無視をされ、大野くんの親衛隊には悪口を言われ、後藤さんには大きな声でからかわれたり、足をひっかけられたり、雑用を押し付けられたりと嫌がらせをされる。

ミライちゃんとはもう話していない。

大野くんの親衛隊と一緒にいるからきっとわたしの悪口でも言っているんだろうな。

そんな苦しい生活が数日続いたある日、大野くんはキリッとした表情で教室にやってきた。

嫌な予感がした。

その嫌な予感は当たると確信があった。

嫌な予感って不思議と当たるものだから。


「俺のせいで時田に嫌な思いをさせた。ごめん。何かあれば俺を頼って。俺が時田を守るから」


ほら、当たった。

本当に自分のせいだと思っててわたしを守ってくれるつもりなら何も言わないでほしい。

わたしの味方がいないこの教室でそんな宣言をしないでほしい。

大野くん的にはあえての行動だったのかもしれない。

だけど、逆効果なんだ。

周りを見てよ。

鋭い視線を向けていたみんなの視線がより鋭さを増したこと。

人気者の大野くんにここまで言ってもらえるクラスで浮いた女子のことを、大野くんのことが好きな人からしたらおもしろくないに決まってる。

汚れのない真っ直ぐな眼差しで「俺がいるから大丈夫」と力強く言い切る。

何が大丈夫なのか。

今の行動でわたしが敵を増やしたことも知らず。みんなの怒りの火に油を注いだことも知らず。

正義感に満ちあふれている、この場でただ一人だけ現状を理解していない大野くん。

悪意なくしているから何も言えない。

大野くん的にはわたしのことを守ろうとしてくれてのことだから何も言えない。

結果はどうあれ気持ちに嘘はないんだろうし。