視線が痛い。息が苦しい。逃げたい。
早くこの場から逃げ出したい。
汗が背中を伝って気持ち悪い。
この夏の暑さのせいか冷や汗なのかもわからないし、今はそんなこと考えている場合ではない。
「なぁ! 聞いてんの⁉」
わたしの気が逸れたのがわかったのか、机を蹴られて勢いよくお腹にぶつかった。
想像以上に痛く苦しくて鈍い声が出たあとにむせるけど、周りからの冷たい視線は変わらない。
わたしが全員を敵に回した証拠だ。
今はみんなが後藤さん側である。
みんなの思いにより正当化された後藤さんの行為に、誰も疑問をもつことも不満に思うこともない。
わたしへの同情する気持ちなんてもっとない。
「無視すんなよ!」
いつも以上に生き生きとしている気がする。
味方をつけた後藤さんは無敵状態だ。
人間、味方がいるとわかると強くなる。
強いと勘違いをする。
味方がいないわたしは勘違いではなく弱いけど。
味方がいないって、こんなにも辛いことなんだとひとりになって強く思い知らされた。
「やめなよ。ビビらせすぎ」
後藤さんとは打って変わってあっけらかんとした声。
涙を堪えて下唇を噛み締めながら声の主である戸田さんを見ると、この場には相応しくない笑顔を浮かべていて思わずゾッとした。